andropJ-WAVEで、月曜日から木曜日の深夜2時にオンエアされている番組『THE KINGS PLACE』。昨年7月から、クリープハイプ、People In The Box、androp、Nothing's Carved In Stoneが各曜日を担当してきたが、その間、『新世代音楽王の集い』という番組のコンセプトを、見事に全うするような飛躍を遂げてきた。並行してライヴイベントも行われてきたが、今回は3回目にして最大キャパとなる新木場STUDIO COAST。とは言え、最早この会場が狭く感じられるくらいだ。当然、満員御礼。そして、この節目をもって、10月からは新たなバンドにパーソナリティが交代となる。言わば卒業式のようなイベントとなった。
Nothing's Carved In Stone トップバッターを務めたのはNothing's Carved In Stone。先日ツアーを終えたばかりとあって、その勢いのまま“Sprit Inspiration”から疾走。生形真一や日向秀和が前にぐいぐい出れば、大喜多“オニイ”崇規もスティックを突き上げ、短い時間で存在を刻み付けるようなアプローチを見せていく。あっという間に一つになっていき、村松拓が「よう!」と叫ぶと、オーディエンスも「よう!」と返す。畳み掛けるように「今や飛ぶ鳥を落とす勢いの4バンド」と村松。そうなのだ。純粋に、こんなにお得なイベントってない!と思う。
Nothing's Carved In Stone 村松が身振り手振りを交えながら歌うと、自然とフロアからハンドクラップが沸き上がった“Pride”、「ここにお前ら何しに来た!? 踊れ!」という煽りから、ダンスフロアが生まれた“Out of Control”と続け、ライヴで育ててきたキラーチューン“Isolation”でトドメを刺す。「もっといけるだろ!?」、「今が全てだぞ!」という村松の叫びに煽られるように、ダイブ、ダイブ、ダイブ! 思いっきり熱い現場を作り上げて、ステージを終えた。
People In The Box青い光の中、始まったのはPeople In The Box。波多野裕文が拳を突き上げて“ダンス、ダンス、ダンス”を踊るように歌い出す。そして、“ニムロッド”から“完璧な庭”をするりと繋げて聴かせる。あっという間に、彼らの色に会場は染まっていった。
People In The BoxMCでは、「今日は楽しい……楽しい楽しい一日ですね」と噛み締めるような波多野。そして、10月10日にリリースされるアルバム『Weather Report』から、“気球”を披露。「呼んだよね!?」とキレ気味に始まった山口大吾のMCタイムで、山口が「(アルバムを)買う人!?」と呼び掛けた時に、多くの人が手を挙げていたけれど、もっともっと買った方がいいと思うな。本当に素晴らしいアルバムだから! 山口は、「(『THE KINGS PLACE』の)1stシーズンファイナルって、ちょっと意味がわからない」と毒づきながらも、「AKBみたいなポジション?」と絶妙に喩えてくれた(笑)。最後は山口の「全力でぶっ壊しに行くよ!」という絶叫から“金曜日/集中治療室”へ突入し、“球体”へ。何度聴いても癖になるメロディとリズムに身を委ねているうちに、あっという間に時間が過ぎていた。
クリープハイプクリープハイプはSEも前触れもなく登場。まずは4人が向き合い、尾崎世界観が「いけますか?」と一言。その真意はすぐに明らかになった。1曲目から“HE IS MINE“だ! オーディエンスの「セックスしよう!」の叫びは、ワンマンライヴと見紛うほどに大音量だった。そして、“ウワノソラ”、“社会の窓”と、吐き出す一つ一つの言葉に歓声があがるようなナンバーを立て続けに演奏。改めて、彼らがラジオでパーソナリティを務めていたことを痛快に感じる。ここまで終えて尾崎は「こんばんは……どうですか、この流れは?」と一言。もちろん、最高! そして、とびっきりラヴリーなメロディの“さっきはごめんね、ありがとう”、《夏のせい》がリアルに響く季節となってきた“ラブホテル”、長谷川カオナシが歌う“かえるの唄”と続けていく。
クリープハイプ尾崎は「ラジオをやっていたことを新曲にします」と思いを馳せながら、「まだ(J-WAVEに)ちょうどいいのがあるからねえ、0時~2時の……」と、家入レオやハマ・オカモト(OKAMOTO’S)がパーソナリティを務める『RADIPEDIA』へと立候補するという場面も! そして、この夏を彩った“憂、燦々”で大いに盛り上げて締め括った。
転換を待っていると、不意に山口大吾と長谷川カオナシが登場。長谷川が「平日の深夜にどれくらいの人がラジオを聞いていたのか」というアンケートをとったかと思えば、山口はスタッフ名まで刻まれているオフィシャルTシャツを「僕が言って作らせたんだけど」と大胆発言。番組に対する愛情と、番組で生かされたであろうキャラクターを感じた(笑)。そして、いよいよトリのandropへ!
会場中がハンドクラップでandropを迎え、そのまま1曲目の“MirrorDance”へ。内澤崇仁は、途中で「『THE KINGS PLACE』! 好きだ!」と、溢れる愛を表明していく。そして「飛び跳ねる準備は出来てますか?」と言ってはじまった“Boohoo”では、2階まで揺れるほど誰もがジャンプ! 内澤は「最後まで残ってくれてありがとう」と言っていたが、これだけのバンドが続いてきて、最後までこの熱狂である。“World.Words.Lights”では内澤と佐藤拓也が楽器を置いてハンドクラップを煽り、バンドの自由なスタンスを発揮していく。言葉も、音も、動きも、全てが解き放たれているのにキャッチーで、居心地がよい。その感情はバンドも同じだったようで「楽しい時間は、あっという間です。ほんとは終わりたくない……はぁ」という内澤のため息は、心の底から出ていたようだった。それでも、“End roll”をじっくりと届けて、ステージを降りた。
andropアンコールに応えて、すぐさま登場した4人。内澤は「(ラジオを)こういう人が聴いていてくれたのかな、やっと会えたなっていう感じ」と、トリに相応しい総括を述べ、「まだまだ声出せますか!? 一つになりましょう!」と始まったのは“Voice”! シンガロングとハンドクラップが炸裂し、会場全員で演奏しているような、本当に美しいフィナーレとなった。
内澤からは「嘘は言いたくないけど、約束したい。またこの4組でライヴしたい!」と嬉しい宣言も飛び出した。それだけ、バンドにとっても充実の時間だったのだろう。この4組が同じ番組を担当していたことは、今思うと凄いこと。そして10月からは、ゲスの極み乙女。、WHITE ASH、KANA-BOON、KEYTALKが新たなパーソナリティとなる。ロックの可能性と愛が詰まった番組で、また、伝説を生み出していって欲しい。(高橋美穂)