朝から怒濤の大歓声が巻き起こる「ULTIMATE STAGE」で、「みなさん、おはよう! マーティ、おはよう!」と「METAL CLONE X」(鉄色クローンX)のギタリスト=マーティ・フリードマンに優雅に呼びかけて、さらに雄叫びのような歓声を呼び起こしていたのは、艶やかな着物姿の八代亜紀!――日本最大級のヘヴィ・メタル/ラウド・ロック・フェス『LOUD PARK 13』の2日目トップバッターとして登場したのは、マーティ・フリードマン、フレディ・リム(CHTHONIC)らによるメタル・プロジェクト=METAL CLONE X。ももいろクローバーZのカバー・アルバム『鉄色クローンX』にも収録されている“Chai Maxx”“行くぜっ!怪盗少女”の重金属カバー・バージョンでさいたまスーパーアリーナを震撼させた後、“雨の慕情”を演奏したところに登場して名曲を歌い上げたのが八代亜紀本人で、マーティ作曲による新曲“MU-JO”を歌い上げて会場を熱く沸き立たせていく……8回目の『LOUD PARK』はそんなメタル亜空間殺法的な場面で幕開けを迎えたのである。(1日目レポートはこちら http://ro69.jp/live/detail/90816)。
鬼才キム・ベンディックス・ピーターセン率いるKING DIAMONDが「船便の遅れによる機材未着」で開催直前に急遽出演キャンセルとなり、結果的に2日間のヘッドライナーを務めることになったのが、言わずと知れたメタル・ギターの王者:YNGWIE MALMSTEEN! 「ULTIMATE STAGE」の上手側を埋め尽くすように要塞の如く積み上げられたアンプの前にインギー様がスタンバイ、世界を魅了してきたあの超絶速弾きが白のストラトから飛び出した瞬間、フロアから熱い歓声が噴き上がった――のだが。“Rising Force”“Spellbound”“Damnation Game”……と曲が進む間も、当のインギーは収まる気配のないアンプのノイズや各バートの音のバランスの不調が気になるようで(しかもその苛立ちをプレイ中に隠そうともせずメンバーに露にするのもインギーならではだ)、熱狂と緊張感が相半ばする中でステージは展開されていた。とはいえ、やはりそのテクニカルなギター・プレイには美麗さと風格があった。“Hiroshima Mon Amour”“Adagio”などを次から次へと畳み掛けて“Heaven Tonight”終わりでギターテックめがけて高々とギターをぶん投げて退場したインギー(どうやらこの曲でも機材の不調があったらしい)。アンコールの“I'll See the Light Tonight”ではラストに圧巻のギター破壊! 何度も放り投げては壊し、ネックを持って舞台に叩き付け、もはや残骸と化したストラトをアリーナへ放り投げてみせた後、4人で肩を組んで歓声に応えてみせたインギー。最高にエキサイティングなアクトの余韻が、家に帰ってからもしばらく消えないほどの耳鳴りとともに残った。
そして、片や「BIG ROCK STAGE」のラストを飾ったのは、2010年に逝去したロニー・ジェイムス・ディオ(DIO)の遺志を継ぐべく結成された、ヴィヴィアン・キャンベル(G)、ヴィニー・アピス(Dr)、ジミー・ベイン(B)、クロード・シュネル(Key)というDIO初期メンバーにヴォーカル:アンドリュー・フリーマンを加えたLAST IN LINE!(この日はジミーの代わりにレイモンド・ホーラーがベースを担当)。 『LOUD PARK』初回(2006年)の出演時はRAINBOWの“Kill The King”やBLACK SABBATH“Heaven And Hell”など過去のロニー在籍バンドの楽曲も盛り込んでいたDIOだが、LAST IN LINEはまさしくDIO純血のプロジェクト。バンド名の由来にもなっているDIOの2ndアルバムのタイトル曲“The Last In Line”はもちろん、1st『Holy Diver』の“Stand Up And Shout”に3rd『Sacred Heart』の“King Of Rock And Roll”に……と超硬質メタル魂の結晶たる名曲目白押しの熱演! ヴィヴィアンのダイナミックなギターをはじめバンドのアンサンブルの完成度はもちろん、そんな重轟音をまとめて高揚の彼方へと押し上げるようなアンドリューの絶唱も、この日の会場一丸の狂騒感に一役も二役も買っていた。
この日のラインナップの中で特に高い熱量を生み出していたのは、2007年以来2度目の『LOUD PARK』出演となるAMORPHIS、2007年/2011年に続いて3回目の登場のTRIVIUM、初登場のSTRATOVARIUSだった。“Into Hiding”などの楽曲群に加え最新アルバム『Circle』からのナンバーも織り重ね、デスでメロディックでメランコリックな戦慄の音世界を構築していたフィンランドの豪傑:AMORPHISは、ラストの“House Of Sleep”でフロアに歌を委ねて合唱へと導いてみせた。USメタルの精鋭:TRIVIUMは最新作『Vengeance Falls』の“Brave This Storm”から“Kirisute Gomen”“Shogun”までがっつり披露。2010年代をリードする精鋭としての堂々たる存在感と超硬質サウンドの強靭さ、「ゲンキデスカ!」「スゴイ!」「トベ! トキオ!」と煽りまくるマシュー・キイチ・ヒーフィー(Vo・G)のバイタリティが渾然一体となってアリーナにでっかいウォール・オブ・デスを巻き起こしていた。そしてSTRATOVARIUS。若き新ドラマー=ロルフ・ピルブを戦力に加えたフィンランド・パワー・メタル5人衆、“Halcyon Days”“Fantasy”“Dragons”など最新アルバム『Nemesis』の楽曲を積極的に畳み掛け、激しくも麗しいサウンドで会場をぐいぐいと惹き付け、ラストのエレクトロ・メタル的アンセム“Hunting High And Low”では高らかなシンガロングを生み出していた。
メタル勢の居並ぶラインナップの中で真っ向勝負のハード・ロックを響かせていたのは、CARCASS/ARCH ENEMYでのアクトを含め昨年以外『LOUD PARK』毎回出演のマイケル・アモット(昨年は弟のクリストファー・アモットが出演)率いるSPIRITUAL BEGGARS。ニュー・ウェイヴ・オヴ・トラディショナル・ヘヴィ・メタルの旗手=スウェーデンの新鋭:ENFORCER、日本未リリースながら何度も大きなサークルを描き出してみせたフィンランドのエクストリーム・メタルの雄=MOKOMAといったアクトは、北欧メタルの土壌の豊かさを存分に物語っていた。『SUMMER SONIC 2013』でも「日本凱旋アクト」を実現させていた、SIAM SIADE・DAITA率いるUSバンド=BREAKING ARROWSが、DAITAの強烈なリフ・ワークとニック・フロスト(Vo)の熱唱とともにパワフルなヘヴィ・ロックを響かせていたのも印象的だった(この日のドラムはFUZZY CONTROLのSATOKO!)。
そして――『LOUD PARK』最年少記録を叩き出した(平均年齢14.3歳!)、稀代のメタル・ダンス・ユニット=BABYMETAL。「首の準備は出来ているか?」と、「『鋼鉄の公園』への公園デビュー」を煽るオープニング映像から、“BABYMETAL DEATH”“メギツネ”など鉄壁のセットリスト、サマソニで実現したメタル・マスター=METALLICAとの邂逅映像とともに「その先」への決意をぶち上げる中盤の映像まで、気迫と闘志あふれまくりの内容でもって、メタル・ファンひしめくこの日のステージに臨んだBABYMETALの3人。燃え盛る轟音バンド・サウンドの中でSU-METALが凛と歌い上げた“紅月-アカツキ-”。“ヘドバンギャー!!”の巨大サークルに“イジメ、ダメ、ゼッタイ”のウォール・オブ・デスに、と次々に熱狂空間を生み出したエンディング。発表当初は波紋も呼んだブッキングではあったものの、サプライズでは終わらない鮮烈な爪痕を『LOUD PARK』に刻んでいった。個人的にも毎年参加している『LOUD PARK』、果たして来年はどんなラインナップが?と、今から楽しみで仕方がない。(高橋智樹)
LOUD PARK 13(2日目) @ さいたまスーパーアリーナ
2013.10.20