knotlamp @ 代官山UNIT

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最高のライヴだった。少なくとも本編17曲の間は、湿っぽさをまるで寄せ付けず(湿っぽさを無理に振り払おうとするのとも違った)、knotlampがこれまでに残してきた楽曲のソングライティングとギラッギラのバンド・サウンドが遥かな高みで手を取り合い、これ以上ないというポジティヴなヴァイブを振り撒き続けていた。11/29福岡、12/5大阪、12/6名古屋、そしてこの日の東京、と駆け抜けてきた『Hello To Nostalgia TOUR 2013』は、前々から告知されていたとおりknotlampの活動休止前最後となるツアーだ。インタヴュー記事などによって活動休止の理由は受け止めていたのだが、正直、パフォーマンスの最中に、なぜこのバンドが活動を休止しなければならんのだ、と何度も思った。そんな最高のライヴになった理由も、後にKEIT(Vo./G.)によって語られることになるのだが。

バンド・ロゴのバックドロップを背負って登場した4人は、沸き立つオーディエンスを前に、やはりと言うべきか最新アルバム『Hello to Nostalgia』の冒頭を飾っていた“Mr.Bro.”を届けてくる。《Stay with me》と呼び掛けながら、物語のひとつの区切りを分かち合って一気に転がり始める、ドラマティックなオープニングだ。両翼のTOHRU(Ba./Cho.)とMAHIRO(G./Cho.)は身を乗り出して煽り立てながらプレイし、《笑え》のフレーズを叫ぶように放つKEIT自身が、晴れやかな笑顔を見せていた。新作曲はそこそこに“What should I do?”までの序盤3曲を畳み掛けると「knotlampでーす!! 最後までヨロシクお願いします!」とKEIT。「今日は最高のライヴにしようと思って。大事なライヴ、いつもそうなんやけど、今日は特に、友達で来たとか何人で来たとか一人できたとかあるだろうけど、全然関係ないからね! 俺らもみんなと一緒に楽しんで、思い出にして貰って、今日一日をデカイものにしましょう! ハイタッチしろ! 出来れば知らない人と!」と告げて、“Back to ZERO”へと向かうのだった。

knotlamp @ 代官山UNIT
“Booster”、“Another Escape”、“遠くへ”といったデビュー時期の楽曲連打では、揉みくちゃになりながら歌声を上げるフロアと、燃え盛るバンド・サウンドが正面衝突を起こす。精悍で、澱みや曇りの欠片も見られない表情の4人は、ときに満面の笑みを浮かべながら楽曲群を繰り出していった。その最中にも「楽しんでまっか? 笑ってまっか? 言わんでもみんな顔に書いてあるわー、アホ、って(KEIT)」「ここでまさかのディス?(MAHIRO)」「次の曲で最後になります! だって貰ったセット・リスト見たら、最後に“君が代”って書いてあったよ(KEIT)」といった調子で、楽しげなヴァイブが途切れることはない。エキゾチックで巧みなメロディをAKIHIKO(Dr./Cho.)の猛烈な2ビートが追い掛けて始まる“夜空”の後には、「今日という今日は、一発に掛ける思いが強いというか。後がないので、何が何でも楽しんでください!」とKEITが告げ、“Across my world”だ。眩いバンド・サウンドの中でTOHRUはハーモニーを歌いながら拳を振り上げ、MAHIROはこれでもかとギターを弾きまくっていた。

そんな、冷める隙が一切見当たらないステージを前に、“ずっと何処かに”では照明がフロアを満たしつつシンガロングが広がる光景も美しかった。「じゃあこんな感じで本番行くんで、って伝えてきた(笑)」「もう66年ぐらい活動してきてるからねえ。キツかったー、40年目が(笑)」といった風に冗談めかしてばかりいるKEITだが、エモーショナルなこと極まりない歌詞と、前のめりにして誠実なサウンドが分かち合われていることこそが重要なのだと思える。“Libra”から“Oblivion color”に掛けてKEITが焦げ付いた歌声を届けると、フロアからは叫びともつかない「お前らの音楽、サイコーだからな! 絶対絶対、待ってっから、絶対復活してくれよ!!」の声が上がる。「今回4本のライヴをやってきて、凛としていたくて。俺は小さいときから、どんなときでも前向きに生きていこうっていう環境に育ったらしく。でも、3か所でその信念がちょっと揺らいでさ。ライヴなんか泣いたっていいし、しんみりしたっていいんだけど」「お前らがそう思ってくれてることは、伝わってるからさ。みんなが今まで、俺たちを支えて、上げてくれて。だから最後まで、笑顔でいてくれよ」。

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ライヴ本編は、“時の行方”からクライマックスに向かっていった。そして“Last Train”が、最大級のOIコールを巻きながらひた走る。「サイコー、とかもっと言って。俺らも愛してるよ。さっきも言ったけど、俺らの価値はお前らが決めるんだ(KEIT)」「こんなに集まってくれてありがとうございました! 以上!(TOHRU)」「サイコーです! ヤバいとか言いたくないけど、ヤバいです!(AKIHIKO)」「本当にありがとう。みんなの笑顔を忘れずに、これからも頑張っていきたいと思います!(MAHIRO)」とメンバーが口々に言葉を投げ掛け、改めてKEITが語る。「伝説とは程遠いバンドやから……伝説になりたいのよ。いるだけで絵になるじゃん、この(着ているTシャツを指しながら)AC/DCとかさ。KISSとか凄いじゃん。でも、初めて音を出したときの気持ちでずっとやって来れたのは、本当に幸せでした。みんなが言ってくれる気持ちとか、見つめてくれるのとか、俺らにとっては酸素だから。痛いのはいいよ。でも、痛い時期を過ぎたらさ、笑っていこうというのが、俺たちのメッセージだからさ。この活動休止、ラスト・ライヴというのを作ってくれたのも、ある意味、みんななんよ。これからも、大変なことがいっぱいあると思う。でも前向きに、笑っていけるようにしたいと思います」。

「この曲で全国にたくさんの友達ができました! みんなとの出会いの曲も、これかも知れん。最後はこの曲で、俺たちらしく終わりたいと思います!」とプレイされるのは、“A Star Tribe”だ。オーディエンスも目一杯歌声を上げながら跳ね上がる。TOHRUのベース音だけを残して盛大なシンガロングを巻き起こす、この光景はやはりとても特別で、普遍的なものだ。そこから再びバンドの音が立ち上がり、至る所で笑顔の絶えないライヴ本編は幕を閉じた。アンコールの催促とばかりに、引き続き“A Star Tribe”の歌声が響き渡るのも、お馴染みの光景である。

メンバーが再び登場すると、TOHRUがフロアの光景を写真に収めたり、AKIHIKOが「このアンコール終わったらもう、アンコールないからね。悔い残さんで。おう、かかって行くよ!」と告げたりするのだが、なかなかKEITだけが再登場しない。ようやく姿を見せると、「いや俺、アレルギー性鼻炎やから。泣いてへんから」と語り出す。「2月に、チェルシーホテルのライヴやったでしょ。それからバンドが難しいんじゃないかって話になってさ。バンドって、人が複数やしな。なかなか、揃って行くの難しいんだよ。みんな正直やしな。俺、あまり人間好きじゃないしな、ぶっちゃけ。でも、バンドを好きな人は好きでさ。俺が書いた曲とか、大切な夢とか、真面目な顔して受け止めてくれるのが、このメンバーでした。だから、バンドが難しいって話になって、なんでなんやろうって思って……ずっと一人でした。3人の顔も見れんくてさ。今日、始まる前に、今までごめんな、感謝してますって、言いました。4日目も結局、感情に負けて崩れちゃったけど、みんなの前だからいいや。knotlampが好きって人は、その気持ちを大切に、待っててください。人生、何があるか分からんしさ。メンバーそれぞれが、良い方を目指して頑張るから。俺はもう、バンドマンとしての腹は全部割りました! 本当に全部。あとはアンコール、まだやってくれるよな!?」

knotlamp @ 代官山UNIT
そして“Innocent days”、“The Limited World”といったナンバーで、感極まる思いも丸ごと乗せて再燃する4人とオーディエンスである。「待っててくれるんやったらさあ、元気でいてね。捕まったりとかさあ、事故とか病気とか、気をつけてね。ジャンキーになったりとか(KEIT)」「親戚のおじさんみたいやな(MAHIRO)」「みんなさあ、普段どんな生活しとるのか知らんけど、マジでいい顔しとるよ。自分のこと好きになれん人がいるんだったら、ホメて上げてください! いろいろあったけどさ、knotlampという冒険、ほんとありがとね!(KEIT)」と次々に溢れ出る言葉を挟みながら、最後は「ヴォーカルはあなた!」と放たれる“Flag”だ。《全てなくしたそんな夜にも朝は来て》のラスト・センテンスを、KEITはフロアに染み渡らせるように歌いきり、眩い光が降り注ぐような残響の余韻とともに、knotlampはステージの幕を引いた。

MCを書き起こすと、どうしても情緒に引っ張られがちにみえてしまうかも知れないが、何より、knotlampがこれまでに残してきた楽曲の、不器用でありながらもひたむきなメッセージと、それを乗せた音楽のエネルギーが分かち合われるライヴであった。この確かな足跡があるからこそ、ノスタルジアにも笑顔で向き合うことが出来る。2014年1月22日には、ベスト・アルバム『MY PROLOGUE』がリリースされることも発表された(序章と名付けてしまう前向きさが何とも彼ららしい)ので、これまでのknotlampが残してくれたものの大きな価値を、再確認する手掛かりにして欲しい。(小池宏和)

01 Mr. Bro.
02 Ash's Children
03 What should I do?
04 Back to ZERO
05 Booster
06 Another Escape
07 遠くへ
08 My steady faith
09 夜空
10 Across My World
11 Perfect Holiday
12 ずっと何処かに
13 Libra
14 Oblivion color
15 時の行方
16 Last Train
17 A Star Tribe
encore
18 Innocent days
19 The Limited World
20 Flag
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