【コラム】だから、the telephonesは休むことにしたんだろう――武道館公演を終えて

【コラム】だから、the telephonesは休むことにしたんだろう――武道館公演を終えて

サビが《I am DISCO!!!》である。曲名が“Keep Your DISCO!!!”である。とにかくもう、一貫して、めったやたらとディスコディスコと連呼するのがthe telephonesであるということに慣れきっていたもんで、改めて考えもしなかったが、そもそも言葉としておかしい。「私はディスコです」って。「あなたのディスコを保て」って。
バカなんだろうか。バカになりたいんだと思う。いろんなことが気になっていて、常に不安で、常にどうしていいかわからなくて、常に考えても考えても答えが出ないことに囚われていて、常にドブに半分浸かっているような状態である己のアタマをすぱーんとトバしてしまいたい。せめて音楽が鳴っている間だけでも真っ白で踊り狂わせてほしい。なんで。やってらんないから、もう。

これまで、それに近い効果を自分にもたらしてくれた音楽はいくつもあったが、いずれも「近い」であって、「完全」ではなかった。ならば自分で「完全」にそうである音楽を作る。だからBPMは速くなる。声は高くなる。メロディはかけ声みたいになる。ギターは常に何かをひっかくように鳴らされ、シンセは常に「音を厚くする」以外の目的で弾かれるようになる。ノブという「アジテート担当」のメンバーが必要になる──というふうにいちいち理屈をつけて組み立てていったわけではないだろうが、こういうふうに考えると、the telephonesが今のようなバンドになったのがなぜか、なんとなくわかると思う。そして、だったらもっとぶっとんでいて能天気な音楽になっていてもいいのに、ぶっとんでいつつもその「ぶっとぶしかない」切実さも同時に鳴っている、だからリアルで生々しい音楽になっていることの理由もわかると思う。

ただし、だとしたら、ひたすらそういう音楽を作れていればそれでいい、ということになるが、続けているうちに変わっていった。音楽の目的がそれだけではなくなっていったし、もっといろんな感情や思想がこめられた音楽になっていったし、もっといろんな効果を聴き手に及ぼす音楽になっていった。
バンドがそうしたいと思ったというよりも、気づいたらそういうものを作るようになっていたのではないか。それはバンドの進化でもあるが、ファンの進化でもある。ファンがそれを求めたし、そんなファンの期待に応えるだけでなく、さらにその先に導いて行くようなポテンシャルを、バンドが持っていたのだと思う。

その結果として今、こうなっている。これってバンドとファンのありかたとして、理想的なんじゃないか。5月21日、バンド結成10周年のライヴでありワンマンとしては活動休止前最後となる超満員の日本武道館で、そんなことを考えた。そして、理想的なんだからこのまま続ければいいのに、と思ったが、だからいったん休むことにしたんだろうなあ、とも思った。(兵庫慎司)
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