【コラム】[Alexandros]とONE OK ROCKが教えてくれた、ロックのワクワク感――フジロックに在ったもの

【コラム】[Alexandros]とONE OK ROCKが教えてくれた、ロックのワクワク感――フジロックに在ったもの

今夏フジロックの最終日、グリーンステージにトップ出演を果たした[Alexandros]の川上洋平は、出演者として出るまでフジロックには行かない、という長年の思いが果たされた喜びを露にしながら、同日のヘッドライナーを務めたノエル・ギャラガーをただひとり憧れたアーティストと呼び、「あの人が俺の師匠で良かった」と語っていた。ちなみに、ノエルの3つ前のスロットに出演したアーティストは、かつてノエル自身が「俺はジョニー・マーになりたかったんだ」と語っていたその人である。また、ノエルと一緒にオアシスとして活動していたアンディ・ベルは、元々オアシスのレーベル先輩格でもあったバンド=ライドを再結成させ、トリ前のスロットに出演した。

要するに、僕のようなおっさんのロックファンには堪らない、アーティストたちのドラマが、あの日のグリーンステージにはあったということだ。[Alexandros]も、そのドラマの中にいた。

もうひとつ、個人的にとても印象深いステージがあった。ONE OK ROCKだ。若いエネルギーに満ちていながら、恐ろしくタフなサウンドで熱演を繰り広げていた4人。Takaは「いくよっ!!」と少年のような声で呼び掛けたかと思えば、次の瞬間にはすべてをなぎ倒さんばかりのスクリームをぶっ放す。そして彼は、「いつもフジロックに来てる人たちは、どうしてONE OK ROCKが、って思うかもしれませんが、僕たちは今、期待と希望が胸の中に渦巻いて、100を超えて振り切れています!」と告げて“Stuck in the middle”に向かった。更に、バンドを始めた頃には既にあって、今までは遊びに来たこともなかった、というフジロックとの距離感を正直に丁寧に語り、「僕たちなりのテンションとモチベーションで、やりたいと思います」と“Cry out”を披露した。

なにか、もの凄いことが目の前で起こっている気がした。実際、この日のONE OK ROCKは凄かったし、彼らは海外のロックファンと向き合う活動も積極的に行ってきたバンドだ。でもそれだけではない。フジロックとの距離を冷静に見定め、海外のアーティストやオーディエンスとの距離を冷静に見定め、世界という舞台で活躍することを深く考えて実践する、ONE OK ROCKの姿勢がハッキリと伝わって来た。

川上洋平がノエル・ギャラガーに寄せていた熱いリスペクト精神と、Takaがフジロックに向けて表明した冷静で真摯な距離感は、まったく異なるようで実は同じものである。それは「理解」だ。深い理解が、熱いリスペクトなり、クールな距離感なりといった姿勢の違いに結びついただけで、理解がなければそんな明確な態度を取ることさえも出来ないはずなのだ。

川上やTakaが洋楽シーンに対して抱いた「理解」は、ロックをいっそう面白くする。そんな確信があった。我々ロックファンは、彼らをサポートするために何が出来るだろう。口で言うのは簡単だ。彼らの「理解」についていけばいいのだ。漠然と洋楽ロックを聴いて、洋楽シーンに詳しくなれという話ではない。これまで誰も知らなかったことを経験した彼らが、これ以上何に挑戦しようとしていて、何を成し遂げようとしていて、一体全体何にワクワクして駆り立てられているのか、彼らと同じぐらいの熱意をもって探ってみよう。そこには必ず、彼らと同じぐらいのワクワクが、待ち構えているはずだ。(小池宏和)
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