【コラム】チャットモンチー、再発見!リマスター再発アルバムで振り返る彼女たちの絆

【コラム】チャットモンチー、再発見!リマスター再発アルバムで振り返る彼女たちの絆

これは単なる「チャットモンチーのリマスター再発アルバム」ではない。
最高の「チャットモンチー“再発見”アルバム」だ。

チャットモンチーのデビュー10周年を記念して制作された、既発フルアルバム5作品+ミニアルバム2作品の「Forever Edition」。その第一弾として、1stミニアルバム『chatmonchy has come』(2005年)と初期フルアルバム3枚=『耳鳴り』(2006年)/『生命力』(2007年)/『告白』(2009年)の計4作品が11月11日に発売されている。全作CD2枚組仕様の「Forever Edition」の最大の特徴は、各アルバムの全曲が「リマスター盤(Disc-1)+ライヴ音源(Disc-2)」の2形態で曲順通り収録されていることだ。

オルタナギターがイノセントに軋む“ハナノユメ”のギリギリのポップ感、闇の中で熱く震える魂を赤裸々に響かせた“惚たる蛍”など初期の空気感をリアルに伝えてくる『chatmonchy has come』。上京のワクワクとカオスが入り混じった日常を“東京ハチミツオーケストラ”“恋の煙”“恋愛スピリッツ”などの楽曲に結晶させる姿がスリリングなロックを体現していた『耳鳴り』。“シャングリラ”“女子たちに明日はない”などシングル表題曲5曲をはじめ格段に輝度と強度を増したサウンドを、初の武道館(いきなり2DAYS)で高らかに鳴らしてみせた『生命力』の時期。そして、“Last Love Letter”“あいまいな感情”でのセルフプロデュースを含め、楽曲とアレンジの隅々にまで血液の如く巡る音楽探究心が、その一音一音から滲む『告白』期……それぞれの作品にこめられた想いが、スタジオ音源とライヴテイクの合わせ鏡から立体的に浮かび上がってくる。

さらに、「Forever Edition」のブックレットには、橋本絵莉子/福岡晃子/高橋久美子の3人によるアルバム発売当時のインタヴュー発言に加えて、絵莉子&晃子がキューンミュージックA&R担当・菊池氏とともに各作品当時を振り返る2015年最新インタヴューが掲載されているのも見逃せない。ドラマーが抜けて「ピアノとボーカルのKiroroスタイル」になったチャットモンチーを久美子が観て「この子ら、そんだけやりたいんやって、感動した!」と久美子がドラムを引き受けた、といったバンド黎明期の流れを語ったり、『ミュージックステーション』初出演(2006年)当時の絵莉子の日記に「夢のよう。合成みたいな3人だった」と綴っていたことを明かしたり――といった飾らない発言の数々が、その音像と渾然一体となって、チャットモンチーという唯一無二のバンドの歩みをよりいっそう深く心に刻んでくれる。

そして、各アルバムのブックレットに併せて掲載されているのが、久美子による寄稿文。自身の立場からその足跡を回想し、「二人が頑張ってきてくれたからこそ、こうして昔を振り返っても寂しくはないんだよね。それぞれに満ちる今があるから。おめでとうと同時に、ありがとう。」(『chatmonchy has come(Forever Edition)』より)とバンドを離れた立場から惜しみないエールを贈る久美子の言葉が、絵莉子&晃子の言葉とともに胸に迫る。誰もが知っているチャットモンチーの、誰も知らない真実に触れることができる、至上の作品。来年2月リリースの「Forever Edition」第二弾も今から楽しみで仕方がない。(高橋智樹)
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