トム・ヨーク、03年にトニー・ブレアとの2ショットをごり押しされそうになったと明かす

トム・ヨーク、03年にトニー・ブレアとの2ショットをごり押しされそうになったと明かす

新作制作が伝えられているレディオヘッドのトム・ヨークは、2003年にトニー・ブレア首相に環境問題を逆手に取られ、イメージ戦略への加担を強要されそうになったことを明らかにしている。

当時、トムは地球温暖化対策となる立法を呼びかけていた環境保護団体フレンズ・オブ・ジ・アースのキャンペーン、ザ・ビッグ・アスクのスポークスマンを務めていたが、ブレア陣営がトムとのツー・ショット写真を強要してきたことをフランスのカルチャー誌テレラマで行われた作家で活動家のジョージ・モンビオとの対談で次のように振り返っている。

「そのうちトニー・ブレアのブレーンの人たちとものすごいつばぜり合いになって、やがてぼくをハメる計画になったんだよ。当時はイラク戦争の真っただ中で、その一方でザ・ビッグ・アスク・キャンペーンも評判ですごく成果を上げてたんだ。それでブレアは『この人物には会わない手はないな』って企んだんだね。それからブレアのブレーンの人たちにハメられそうになったんだよ、『きみが首相への表敬訪問に同意しないのなら、首相もフレンズ・オブ・ジ・アースの関係者とは一切会えませんから』ってね。でも、イラク戦争のことがあったからぼくは首相には会いたくなかった。ぼくのモラルとしてブレアとにこやかに写真に収まることなんてありえないことだったんだ。だから、ああいう形で活動に参加したのはあれが最後になったんだよね。でも、やる気にさえなれたらまたやってもいいと思うよ」

また、現在でも体制で実権を握っている勢力はなにも感じないような人間なので、いざ変化を起こそうとしてもなかなか難しいとその苛立たしさを次のように語っている。

「今の社会はまるで勘違いしている一握りの僧侶たちに仕切られてるようなもので、こういう連中は経済的な現状を維持するためになら、人々を祭壇にまつって生贄にすることもいとわない連中なんだ」

さらに環境問題とファンの要求が折り合わないことのもどかしさについて次のように語っている。

「なんか風上に向かって立小便しているようなものなんだ。たとえばレディオヘッドのライヴがある場所で予定されているとして、そこにおよそ2万人は来ると見込まれていて、みんな自分たちのことを観たがっているという状況があって、会場もその周辺の地域じゃそこしかなくて、それなのに興行側から『ここに来るには車でしか無理です』といわれたら、『なんの代替案も公共交通機関もない時には、二酸化炭素排出量を減らすために、ライヴは取りやめてファンのみんなからコンサートを取り上げるべきなのか』という決断も迫られることになるんだよ」

「最初はこういうことを考えて夜も眠れなかったんだよ、こういうとなんか馬鹿げてるけどね。2004年に二番目の子供が出来た時には特に、病的なくらい取り憑かれちゃったんだよ。でも、どうにかしようっていう行動に実際に関わってみることで、本当に助かったんだ。ただ、今でも自分の努力がまるで足りてないっていう思いは変わらないんだけどね」

また、60年代末の反戦運動などとトムの活動を比較する向きについては当時と今ではまるで状況が違うと次のように説明している。

「たとえば、ジョン・レノンとオノ・ヨーコが1969年に平和を訴えて行ったベッド・インを今ぼくが真似してみて、1週間ベッド・インをやってみたとしても、その様子を取材に来てビデオを撮ったりする人なんていないと思うからね。60年代には団結を呼びかけるような曲を書いたら、それが本当に人を集わせたものだったんだ。でも、ぼくが2015年に気候変動についてのプロテスト・ソングを書いたとしたら、それはクソだよね。ある曲や芸術作品や著作物だけじゃ人々の考えは変わらないんだ。でも、変化というのは漸次的に、告発的に起きていくものであって、それが雪だるま化していくんだよ」

その一方で、自分の政治的なスタンスの打ち出し方についてはビースティ・ボーイズに学んだところが大きいと次のように語っている。

「ぼくは音楽が実際にすごく政治的なものになった時代を経験してるんだ。それはレディオヘッドが1998年と99年にビースティ・ボーイズの組織したチベタン・フリーダム・コンサートに参加した時のことなんだよ。ビースティーズはものすごくインディペンデントな活動をしつつ、メジャー・レーベルで活躍していたから、ぼくにとってはヒーローだったんだ。受け身の抵抗とか、メディアとの関係の築き方とか、ものすごく影響を受けたんだよ……つまり、こういうこと(チベタン・フリーダム・コンサート)をやって、でも、ライヴ・エイドやライヴ8のようにはならないっていうさ」
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