【コラム】小山田壮平&長澤知之らによるAL——その1stアルバムが描き出す「音楽の無限」とは?

【コラム】小山田壮平&長澤知之らによるAL——その1stアルバムが描き出す「音楽の無限」とは?

こんなふうに特別な「場」を作り上げてしまう音楽を、僕は久しぶりに聴いた気がする。ALというバンドはそもそも、小山田壮平&長澤知之という優れた表現力の持ち主であるシンガー/ソングライター/ギタリスト同士が深く共鳴するためのプライベートなユニットだった。そこに、藤原寛(B・Cho)と後藤大樹(Dr・Cho)が加わって4人組のバンドとなる。この4人組になったときには漏れなく僕も色めき立ったわけだが、自主レーベル=Revival Recordsからリリースされたアルバム『心の中の色紙』は、そんな4人のアーティストたちの物語さえ、宇宙の片隅に生まれた小さな事象であるかのように、大らかに包容してしまう。

アルバム全曲の作詞・作曲は、小山田と長澤による連名クレジット。リードヴォーカルは2人が楽曲によって交代で受け持っている。曲調からどちらの発案による楽曲なのか、と想像を膨らませたりも出来るものの、余りにも鮮やかに溶け合うハーモニーや、シンプルなギターのストロークに少々のブルースハープを加えただけで心象風景の中へと引き込む“15の夏”のクリエイティヴィティに触れてしまうと、その音楽が聴こえている、という事実だけが最も重要な事柄になってしまう。そんな「場」を作り上げることこそが、ALという4人組バンドの存在意義であるかのように感じさせるのだ。

現在発売中のROCKIN'ON JAPAN 5月号では、ソロとして活動する中でバンドを結成する意図がなかったという長澤がバンド作品を生み出したことや、小山田が当初思い描いていたサウンドのヴィジョンからは掛け離れた作品になったことなど、おもしろい事実も読み取れる。つまり、バンドとしてのALはこの2人の創造性と想像力が絡み合って生まれ落ちたにも関わらず、既に2人の意図を越えた「場」として、機能し始めているということだ。音楽そのものの自発的な成長にただ手を貸しただけのような大作“ハートの破り方”や、普遍的な愛がハレーションを起こす“花束”に触れれば、このバンドがどれだけ特別な化学反応を起こしているかが手に取るように分かるだろう。

リスナーがまっさらな気持ちで向き合う姿勢を音楽そのものが導き、そこから感情と想像力が無限に広がってゆくALの表現世界。今春にはアルバムのリリース前に大阪と東京で対バンライヴも行われた(AL×Polarisの対バンレポート記事はこちら→http://ro69.jp/live/detail/139853)が、4月18日・名古屋からはいよいよツアーがスタートする(4/20福岡、4/25大阪、5/6東京)。そこには、どのような体験が待っているのだろう。(小池宏和)
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