【コラム】[Alexandros]『EXIST!』はすごい。なぜか? 「ロック」でしか作りえない作品だからだ

【コラム】[Alexandros]『EXIST!』はすごい。なぜか? 「ロック」でしか作りえない作品だからだ

「どんな音楽が好き?」と尋ねられたら、ひとまず「ロック」と答える。RO69のユーザーなら、きっとそういう人は多いんじゃないだろうか。でも、実際に聴いているものが、3人組なり4人組の(5人でも6人でもふたりでも、あるいはひとりでも)いわゆるロックバンドが鳴らすロックばかりかと言えば、そうでもない。もうただ感覚的に、自分が「好き」と思ったものを聴いているだけだ。十代の頃からずっとそうだ。

20世紀にレコード産業が盛り上がって、世界中の無数のミュージシャンの作品が流通するようになって、レコードビジネスの便宜上いろんなジャンル名が生まれて、ジャンル同士がまた互いに影響を及ぼしあって、刻一刻と変わりゆく時代の一瞬を我々は生きている。自分は何が好きなんだろうな。自分でもよく分からないな。いつからか、分からなくて当たり前のような気がして、「好き」と思える気持ちだけが最も大切だと考えるようになった。というか、悩んでいるうちに一曲でも多くの作品なりライブなりに触れていたい。

[Alexandros]のニューアルバム『EXIST!』を聴いて、驚いた。“NEW WALL”や“Swan”といったシングル曲、そしてリリース前に音楽番組などで披露されていた“Feel like”の感触からして、彼らはこれまで以上に大胆に、表現のレンジを広げてくると予想していたからだ。その予想は半分当たっていて、半分外れている。おかしいな、と思いながら繰り返し聴いて、『EXIST!』はロックのアルバムだ、という結論に至った。もっと言えば、「あれこれ聴くしあれこれやるけどロックが好き」という思いによって成立した、[Alexandros]のアイデンティティを巡る格闘の記録である。

迷う足取りを鞭打つようにしながら、あるべき自分を奮い立たせる“Kaiju”。胸ぐらに掴みかかるような勢いで「俺」を主張する“Claw”。珠玉のフォークトロニカを織り交ぜたサウンドスケープの中で「君」のアイデンティティを取り戻させようとする“O2”。そして、これまでの[Alexandros]作品のタイトルやフレーズを散りばめたユニークな歌詞とともに爆走する痛快なナンバー“クソッタレな貴様らへ”。飽くなき進化の中で自我の在り処を探りながら、[Alexandros]はあがき、反骨精神を立ち上らせ、ロックでしかないサウンドと歌に到達してしまう。

ありとあらゆる情報に曝され、受け入れ、その上で彼らが自我の真ん中にあるロックを曝け出したのはなぜだろうか。上手に小器用にロックするのではなく、たった今、ロックを発見するような感動を覚えさせるのはなぜだろうか。そうでなければ届かないからだ。誰に? 自我に迷い苦しむ、何者でもない匿名の少女=“Girl A”に、だ。あなたの真ん中にも、必ずロックはある。『EXIST!』という感嘆符付きの呼びかけは、そこに響くはずだ。(小池宏和)

※“O2”の「2」は右下の小さい「2」になります
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