堂本光一出演の『関ジャム 完全燃SHOW』を観た。いつにもまして神回にも程がある

KinKi Kidsの堂本光一をメインゲストに迎え、彼の主演舞台「Endless SHOCK」をはじめとするジャニーズ舞台について特集した先週の『関ジャム 完全燃SHOW』。まさに、神回であった。TVでこれが拝めるなんて! という貴重映像の数々もさることながら、ジャニーズ舞台というジャニーズのエンターテインメントの本質を宿した「秘境」が地上波でついに明らかにされた、記念すべき回だったと思うからだ。

番組内でサバンナ高橋も驚いていたが、TVやコンサートで多忙を極めるジャニーズのアイドルには、毎年のように舞台に立っているメンバーが数多く存在することは世間一般にあまり知られていない。どの舞台も即日完売で、熱心なファンでなければチケット入手が困難だという事情もある。いずれにしても、ジャニーズの広範囲にわたる活動の中でも、最もコアで、そして最もコアだからこそ最もビビッドにジャニー喜多川のエンターテインメント哲学が息づいているのが、舞台なのだ。

今回の『関ジャム』で取り上げられた「SHOCK」のほかにも、ジャニーズは数多くの舞台を制作上演している。滝沢秀明が座長を務める「和物」シリーズである「滝沢演舞城」や「滝沢歌舞伎」、少年隊から後輩へと継承されてきたダンスミュージカル「PLAYZONE」、ボクシングをモチーフに親子の絆や友情を描く群像劇「DREAM BOY」といったロングランの看板演目に加え、ジャニー喜多川の最新作で若手ジャニーズの登竜門としても機能している「JOHNNYS' World」や「JOHNNYS' ALLSTARS ISLAND」など、年間を通していくつもの劇場で膨大な数の公演が行われていて、毎日のようにジャニーズアイドルは舞台に立ち続けている。

そんなジャニーズの舞台には、大きく分けてふたつのタイプがある。ひとつは「PLAYZONE」や「DREAM BOY」、「少年たち」のように座長が何年か毎に代替わりし、後輩へと受け継がれていくバトンリレー式の舞台。そしてもうひとつが「SHOCK」や「滝沢歌舞伎」のように、ひとりの座長がずっとやり続けているライフワーク式の舞台だ。「ジャニー喜多川のエンターテインメント哲学が最もビビッドに息づいているのが舞台」だと先に書いたが、中でも特に顕著なのがライフワーク式の舞台だと思う。それはその舞台の生みの親であるジャニー喜多川から堂本光一や滝沢秀明へ、哲学が秘伝の奥義のように直接受け渡されていると感じるからかもしれない。

2000年の初演から数えて上演回数は1500回間近、今なお進化し続ける驚異の舞台「SHOCK」。現在は座長の堂本自身が演出、脚本も手掛けている。先週の『関ジャム』はそんな堂本の解説と共に、「SHOCK」やジャニーズ舞台の秘密をひもといていくという内容だった。番組では「光と影」とサブタイトルを打っていたが、この「光と影」とはすべてのジャニーズアイドルが標準装備している最も根本的な姿勢のひとつであり、「SHOCK」における堂本光一はとりわけそのコントラストが眩しい人だと言える。「SHOCK」のテーマは「Show Must Go On」。なにがあってもショウをやり続ける、幕を上げ続けなければならないという意味だ。そしてこのテーマは「SHOCK」の舞台内舞台というメタ構造によって、「SHOCK」に限らない、ジャニーズ自体のテーマ、ジャニー喜多川の思想そのものと言っていいものになっている。堂本光一は、その最良の体現者なのだ。

番組内ではその「Show Must Go On」のために、膨大な時間を費やして努力と試行錯誤を繰り返し、完璧を求めていく「影」の堂本の姿が捉えられている。中でも面白かったのが、ジャニーズの十八番であるフライングの解説だ。「SHOCK」では数種類のフライングが披露され、中には「帝国劇場1階席を大きく飛び越えて2階席の最前に着地する」という、とんでもなくアクロバティックなフライングもある。それらを堂本が実際の映像と図解パネルを用いて説明してくれるわけだが、客席からの死角を計算し、照明との距離を測り、テコの原理で反動を付け、ワイヤーの一点釣りと二点釣りでは回転可動範囲が異なり……って物理の授業か! と突っ込みたくなるマニアックぶりが最高すぎなのだ。実際、彼は凄まじい完璧主義者なのだろう。超適当なジャージ姿で地味な作業に黙々と取り組むリハ中の堂本の姿は、まさに職人と呼ぶに相応しいものだ。

しかしひとたび舞台に立つと、堂本光一は鮮やかに変貌する。彼のフライングは全く重力を感じさせず、まるで空高く飛翔していた鳥がひととき羽を休めるかのように、すっと2階席に降り立つ。一筋のスポットライトの中で舞い降りるその姿は、もはや聖的な何かを感じるほどだ。滑車の速度調整に苦労していたあのジャージの男の、その努力の跡は微塵も感じさせない。「影」は消え去り、彼は優雅に、そして圧倒的に「光」と共にある。『関ジャム』で種明かしされた「影」によって、ますますその「光」は光度を上げたように感じる。

努力ではどうにもならない天賦の才能と華。血のにじむような努力の末に初めて獲得できる技術と自信。そんな光と影の両方を兼ね備えたアイドルだけが背負うことができるのが、ジャニー喜多川の求めるジャニーズのエンターテインメントである――それを改めて教えてくれたのが今回の『関ジャム』であり、堂本光一や滝沢秀明、そしてエイトのメンバーたちの証言だった。あと、これからは人にジャニーズ舞台について「あれってどういう内容?」と訊かれたら、ヘタクソな説明を重ねるよりも「目で楽しめるエンターテインメントだから、とりあえず観て!」と言うことにします。(粉川しの)

※記事初出時、本文内容に誤りがありました。訂正してお詫び申し上げます。
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする