rockin’on sonicへの出演から、ちょうど1年。
次世代インディ/オルタナティブシーンを代表するウェンズデイが、日本に帰ってきた!
最新作『ブリーズ』のリリース、バンド内の人間関係の変化、そしてツアーメンバーの変更など、激動の2025年を経て迎えた今回の来日公演。新体制で臨んだステージは、バンドの現在地とその進化を明確に刻み込む内容となっていました。
より確固たるボーカリストとしての力を獲得したカーリーの存在感、新作で拡張された音楽表現のレンジ、そして相変わらず力の抜けたMC。そのすべてが一直線に結びついた、一瞬たりとも見逃せないライブ。そんな一夜の様子を徹底レポートします!
急遽決定したというオープニングアクト、SAGOSAIDの熱演が終わり、フロアを埋め尽くしたオルタナキッズたちの熱気が冷めやらぬまま、観客たちはウェンズデイの登場を待つ。その間に流れるBGMは、Zach Top、Greg Sage、Teetheといった、バンドの音楽的ルーツや現在地と共振するアーティストたち。ステージへの期待を自然と高める、周到な選曲だった。
約30分後、場内が暗転し、メンバーが姿を現す。
そこには、ギタリストのMJ・レンダーマンに代わり、新たなツアーメンバーとして加わったジェイクの姿もあった。新体制でのツアーが始まって間もない時期での公演だったが、違和感はほとんどない。むしろ、和やかで親密な空気感は健在で、ウェンズデイというバンドの核が揺らいでいないことを登場から証明してみせた。
オープナーは、最新作『ブリーズ』の幕開けを飾る“Reality TV Argument Bleeds”。長いイントロの余韻から、カーリーの厚みのあるシャウトが空気を切り裂き、ラウドなリフが一気に押し寄せる。直後に訪れる、柔らかなインディサウンドへの鮮やかな転調。カーリーがかつてロッキング・オンのインタビューで語っていた「成長が音楽に反映されている」という言葉を、そのまま音で証明するような幕開けだった。
続く“Got Shocked”では、ボーカリストとしてのカーリーの成熟がより明確になる。出世作『ラット・ソウ・ゴッド』収録曲でありながら、ロングトーンを臆することなく響かせ、その存在感でフロアを完全に掌握した。
この日のライブは、決してカーリーの独壇場に留まらない。
“Hot Rotten Glass Smell”におけるラウドで多層的なアンサンブル、“Phish Pepsi”でのカントリー然としたグルーヴでは、ペダルスティールギターのサンディと、新加入のジェイクが見事な化学反応を見せる。
“Elderberry Wine”では、MJ・レンダーマン不在のパートを補う形で、サンディが再び大活躍。MJのスラッカーな声色とは異なる、より野太く男性的なコーラスが加わることで、楽曲は新たな表情を獲得していた。新体制が生んだポジティブな変化を、はっきりと感じさせる瞬間だった。
その後は、スマートフォンの機械翻訳を使った、どこか力の抜けたMCが場を和ませる(カーリーの眉毛がない理由は、ストレスが溜まり、剃ってしまったかららしい)。そこから“Quarry”“Townies”といった新旧のアンセムが立て続けに投下され、ライブは一気に終盤へとなだれ込む。
クライマックスは、言うまでもなく“Bull Believer”。
ペダルスティールギターとは思えないサイレンのような高音、グランジの土臭さを孕んだリフ、そこに重なるカーリーの咆哮。何度聴いても鮮度を失わない轟音が、会場を完全に支配した。この日のハイライトであると同時に、ウェンズデイというバンドの核心を改めて突きつける一曲だった。
そして、この夜の最後を飾ったのは、「“Bull Believer”の後でも歌える曲」として作られたという“Wasp”。ウェンズデイ屈指のハードコアナンバー。ギターを置き、マイクを握りしめ、ステージを縦横無尽に叫び回るカーリーの姿は、激しいサウンドとは裏腹に解放感や晴々とした爽快感に満ちていた。
陰と陽、乾きと湿り、断絶と調和。そんな誰もが抱える相反する感情を、ウェンズデイは音楽として可視化し、解き放つ。その力を改めて証明するような一夜でした。次の来日が早くも楽しみです――(北川裕也)