サンダーキャットが、6年ぶりとなる新作発表と、来日ツアー開催をアナウンスした。卓越した技巧を持つベーシストとして、LAシーンを横断するキーパーソンとして、あるいはケンドリック・ラマーやエリカ・バドゥの作品で強烈な存在感を放つ音楽家として、彼はこれまで一貫してユニークな立ち位置を築いてきた。そのトリックスターが、次に送り出す作品のタイトルは『ディストラクテッド』。今の彼の感覚を端的に示す一語だ。
2017年の『ドランク』で、彼はジャズやフュージョンの文脈を踏まえつつ、ポップやヒップホップの世界に自らの居場所をハッキリと刻み込んだ。続く2020年の『イット・イズ・ホワット・イット・イズ』では、親しい友人の死や喪失、孤独といった個人的な経験と正面から向き合い、より内省的な表現へと踏み込んでいった。
その後、パンデミックを挟んでのこの数年間は、前作の経験からまだ回復の途中にいるようだ。酒を断ち、生活のリズムを整え、ボクシングを日課にしながら、意識的にペースを落とす。それは、無理に何かを生み出そうとせず、変わってしまった自分を受け入れる時間だったという。そういったプロセスを経て生まれたのが、最新アルバム『ディストラクテッド』なのだ。
タイトルが示す通り、本作は「集中できない」「気が散る」といった状態を、否定的にではなく、ひとつの感覚として捉え直している。過剰な情報や刺激に囲まれた現代において、多くの人が覚えのある感覚だろう。そのテーマを形にするため、今回迎えたプロデューサーはグレッグ・カースティン。ジャズ的な素養を持ちながら、ポップスやロックの第一線で活躍してきた彼との共同作業は、サンダーキャットの音楽をこれまでとは少し違う角度から照らしている。
一方で、フライング・ロータスとの実験的な関係性も健在で、テーム・インパラ、リル・ヨッティ、エイサップ・ロッキー、マック・ミラー、チャネル・トレス、ウィローといった多彩な客演陣も名を連ねる。サンダーキャットは今、どこに立ちどんな時代感覚を捉えているのか。その答えが、最新作の中にある。リリースを心待ちにしたい。(つやちゃん)
サンダーキャットの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
Instagramはじめました!フォロー&いいね、お待ちしております。