毒とユーモアと愛に満ちたアーティスト、つばき・一色徳保に捧ぐ

毒とユーモアと愛に満ちたアーティスト、つばき・一色徳保に捧ぐ

つばきと出会ったのは、恐らく2004年頃。『来る朝燃える未来』『青』という2枚のシングルを聴いて、エモーショナルな演奏を貫く冷静な視線や、毒づいているのに不思議と愛らしい世界観を感じ、瞬く間に虜になった。そして取材を申し込み、交流を深めていくうちに、これらは全て、フロントマンである一色くんのキャラクターそのものに通じることに気付いたのだ。
内省的なギターロック――つばきを語る時によく言われる言葉であり、決して間違いではないと思うが、私は彼らに対して、初期から変化を恐れずに突き進んでいたバンドという印象の方が強い。1stアルバム『あの日の空に踵を鳴らせ』では、彼らの魅力のひとつとして確立されていく「ダンスロック」という方向性を示唆する“君のヒゲ”が収録されているし、2ndアルバム『夢見る街まで』では、“スタイル”などで爽やかなポップセンスを躊躇なく炸裂させている。臨場感溢れる内省的な歌詞と、琴線を震わせるメロディを生み出す才能を持ちながら、それだけでよしとせず、アンテナを張って次々と新しい挑戦を繰り返す――つまり、音楽的な守りに入らないバンド、それがつばきだった。
その姿勢は、一色くんの脳腫瘍によって活動休止となり、その後に活動再開してリリースされた7thアルバム『真夜中の僕、フクロウと嘘』まで健在だった。彼らは、あらゆる困難にぶつかりながらも、ずっと刺激的なバンドで在り続けたのだ。

でもさ一色くん、この早過ぎる別れは、あまりにも刺激的過ぎやしないかい? ファンのみならず、多くのバンドマンに愛され、その存在感の大きさ故に、活動休止中に「つばきフレンズ」なるプロジェクトまで生み出した彼。体調が悪いということは知ってはいたけれど、もうこの世にいないという事実は、まだまだ誰もが信じがたいと思うよ。

夜を越えてゆけ ゆけ 間違いだらけでも素晴らしい未来
大切な人はずっとずっと 心の中で笑いかけてる
ありのままがいいぜ 今日も明日も 君を守るからこの手と歌で
君は僕の太陽 ずっとずっと いつも心を震わせてゆこう
(“太陽”)

今、改めて思う。一色くんの歌は一色くんのキャラクターそのものだ、と。彼は今も、この“太陽”の歌詞の通りに、ずっとずっと私の心の中で歌い続けている。また、そんな彼を支え続けた小川くんとおかもとさんとの信頼関係は、まさにつばきの花のように鮮やかで美しい。一色くんに、つばきに出会えたことに、心からの感謝を。そして、まだまだ聴き続けるから、これからもどうぞよろしくね。(高橋美穂)
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