レディオヘッドのイスラエル公演をめぐり、トム・ヨークとパレスチナ支援団体らが批判の応酬

これに対して今回のキャンペーンを展開している活動団体「アーティスツ・フォー・パレスチナUK」は書簡に署名した映画監督のケン・ローチの「トムが迫られている選択は簡単なものなんだよ。抑圧者の側に立つか、さもなくば被抑圧者の側に立つかというだけのことなんだ」という発言を団体オフィシャル・サイトに掲載した。

さらに団体としての声明では沈黙を守っていたトムが口を開いたのは収穫だったとしながらも、次のようにトムに反論している。

「しかし、トム・ヨークの発言は4月24日付の『アーティスツ・フォー・パレスチナUK』の公開書簡に署名したデズモンド・ツツ元大司教、サーストン・ムーア、ジュリエット・スティーヴンソン、ピーター・コスミンスキー、ベラ・フロイド、トゥンデ・アデビンペ、ロバート・ワイアットらを含む多数の有志のみなさんが望んでいた熟慮された返事ではなく、急場しのぎのコメントのようなものでした。

わたしたちはトム・ヨークのコメントをよく吟味し、トムと彼のバンドがこれからまさに植民地支配の状況が進行している場所へ向かおうとしていることをきちんと理解している痕跡があるかどうか見極めようとしました。しかし、その手がかかりはみつかりませんでした。

トム・ヨークのコメントを読んだパレスチナ人は誰もが、財産を強奪され、追放を強いられてきていること、そして軍事支配下での生活がどのようなものなのか、それが少しでもこの人物にはわかっているのだろうとか疑問に思うでしょう。トム・ヨークはギタリストのジョニー・グリーンウッドには『パレスチナ人の友達』がいるということ以外には、パレスチナ人についてもまるで触れていません。トム、そんな人はたくさんいるのです。だからといって、かつてあったパレスチナ人の村を潰してその上に建設した4万人強収容するスタジアムで演奏することを正当化できることにはならないとわたしたちは考えます。

わたしたちはレディオヘッドにモラルのともなう判断ができるかどうかということで言い争ったりはしていません。書簡に署名した有志はみな、あなたたちの判断が間違っていると考えています。

トム・ヨークは人々が個人的に自分たちを説得しようともせず、『遠巻きからぼくたちにいろいろ投げつけてくる』ことに不満を表明していますが、少なくともわたしたちの同僚が3名、個人的にレディオヘッドに接触しようと試みました。実際、この交渉がうまくいって実を結ぶことを願って、わたしたちは数週間も書簡の公開を延ばしてきました。しかし、そうはなりませんでした。

トム・ヨークはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相や人々の分断の危険性について不満を述べています。しかし、彼はレディオヘッドのコンサートそのものが政治的な表明であること、そしてそれは根深い分裂を伴うものだということを理解していません。コンサートをやってしまうということは、イスラエルの人々に占領のことやパレスチナ人の苦しみについて昔から語られてきている退屈な話などについて心を煩わせることなどないのだと言ってしまうことになります。『軍服を脱いで、今日見たことや自分がしたことはもう忘れよう、レディオヘッドがそうしても問題ないと言うのだから』と。彼らはあなたに代わってモラルの判断をしたのです、レディオヘッドはなにも心配することはないと言うためにここに来たのだと。」

また、レディオヘッドのファンでもテルアビブ公演中止をバンドに呼びかけているファン集団、レディオヘッド・ファンズ・フォー・パレスチナはオフィシャル・ブログで、「わたしたちは何度も郵便でお願いの手紙をバンドに送りましたし、公のイベントでもきちんと断って渡そうともしましたし、バンドのスタッフや広報担当者などにも連絡しましたが、あなたたちは無視しました」と明かしていて、「そっちから無視しておいて個人的に接触しようとしなかったなどとは絶対に言わせません」とバンドを批判している。そして、ファンとしてグラストンベリーも観る予定だが横断幕も建てるつもりだと宣言している。

さらに「パレスチナのためのイスラエルへの学術文化ボイコット・キャンペーン」という団体の広報はイスラエルへのボイコット・キャンペーンを取りまとめている団体BDSに、次のように今回のトムの発言を報告している。

「少なくともトム・ヨークの言っていることに正しいこともあります。抑圧を受けていて、自分たちの権利を主張して闘争しているコミュニティのために張られるボイコット・キャンペーンというのは、確かに人々の分断を招くということです。

モンゴメリー・バス・ボイコット事件(50年代のアメリカで白人優先席に座っていてどくように求められた黒人婦人がそれを拒否して逮捕されたことへの抗議として、マーティン・ルーサー・キング牧師が組織したバス会社の利用のボイコット運動)、デラノぶどうボイコット事件(60年代にカリフォルニアのぶどう農園で低賃金を強いられていたフィリピン系とメキシコ系の労働者が総勢でストライキを決起した事件)、南アフリカの反アパルトヘイト・ボイコット(南アフリカの人種差別政策に反対して、多数の欧米のアーティストが南アフリカでの公演活動を80年代から1994年までボイコットしていた)など、そのほかのいろんなボイコット運動の渦中でも、抑圧者とのビジネスをいつも通りに続けた輩は常にいたのです。

そういう輩は、抑圧された人たちの権利と共に、歴史の正しい側についた人たちとは区別されることになりました。はたして、レディオヘッドは自分たちがどちら側についていると考えているのでしょう?」

なお、BDSによる反イスラエル・ボイコット・キャンペーンについては、レディオヘッドのほかにもジョン・ライドン、ジョン・ボン・ジョヴィジギー・マーリーのほか、作家のウンベルト・エーコやJ・K・ローリング、映画監督のコーエン兄弟らが反対を表明してきている。

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