【徹底分析】カミラ・カベロ、魅力の根源とは? フィフス・ハーモニー脱退の理由を探る

もちろん、ショーン・メンデスとの“I Know What You Did Last Summer ”でも、マシン・ガン・ケリーとの“Bad Things”でも、カミラのパフォーマンスは抜群なものだ。これらのコラボレーションを行った時点ではカミラはまだ10代で、これだけ説得力のある歌を聴かせるというだけでも相当なものだが、“Hey Ma”でのカミラはもう比較のしようがないほど弾けていて、カミラがなにを欲しているのかをあまりにも明確にしている。


つまり、“Hey Ma”は徹底したラティーノ・ポップになっていて、サウンドは超ポップなレゲトン、歌詞はもちろんすべてスペイン語だ。キューバとメキシコのハーフで、5歳でマイアミに定住するまでキューバとメキシコを行き来していたというカミラがやりたいのはまさにこういう音なのである。

逆に、フィフス・ハーモニーではある程度の成功はすでに約束されていたと言ってもいいのかもしれない。しかし、5人のメンバーによる、あくまでもポップ=R&Bユニットであるからには、やりたいことは常にメンバーの最大公約数になってしまうわけで、おそらくカミラの望むラテン路線というのは、なかなか実現されないものになっていくはずだ。

たとえば、フィフス・ハーモニーではEP『Better Together』のスペイン語盤もリリースすることになったが、これもおそらくカミラのたっての願いだったのだろう。しかし、ファースト・アルバム『リフレクションズ』から“Worth It”のスペイン語版をリリースした時にはなんのアナウンスも行われず、リリースも配信のみで行われ、カミラは自身のヒスパニックとしてのアイデンティティの追求をアーティストとして表現していくにはソロになるしかないと判断したのだ。


それでなくても“Hey Ma”のビデオの冒頭を飾る、キューバのハバナ風(実際にはマイアミ)の街を闊歩するカミラのオーラは水を得た魚としかいいいようのない瑞々しさと喜びに溢れている。スペイン語でなにが歌われラップされているのかさっぱり分かりもしないが、間違いなく、彼女の行く道はこれしかないのだ。

今後、キャリアを追求していくにあたってまたジャンルをまたいでいくこともきっとあるだろうが、自身のアーティストとしてのアイデンティティを確立していく今のこの時期には自身の出自をきちんと打ち出したいという決意表明なのだろうし、バルバドス出身のリアーナも初期にはダンスホール・アーティストとして定評を築いていたことも妙に思い出されるのだ。

というわけで、そうした道順を経て実現したメジャー・レイザーの“Know No Better”への客演はまさにカミラにうってつけなものであるし、実際、素晴らしいパフォーマンスで貢献しているとも思う。


その一方で“Crying in the Club”はベニー・ブランコをプロデューサーに迎え、ダンスホール的な情熱をどこまでもポップに鳴らすものとなっていて、カミラのボーカル・パフォーマンスの強さと強烈さをどこまでも聴きやすく届けるものになっている。おそらくファースト・アルバムの内容と方向性を体現するものになっているに違いない。


なお、“Crying in the Club"のビデオでは冒頭がポップでありながらどこまでも悲痛なバラードになっているが、これはシングル“I Have Questions”をそのままイントロに使った構成になっていて、こんなアグレッシブなアプローチがますますファースト・ソロへの期待を募らせるのだ。(高見展)

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