翌2016年、デュアは精力的にイギリスとヨーロッパでのツアーを続けながら、“Last Dance”、“Hotter than Hell”と立て続けにリリースしていくが、サマーソニックでもオープナーを飾った“Hotter than Hell”は世界的なヒットとなっただけでなく、どこまでも相手をたぶらかしては奈落の底に突き落としていくその歌の内容がリアーナ以来の「バッド・ガール」キャラの登場を告げる画期的なものだ。
さらにデュアは実はまったく逆の立場に置かれた自分の散々な失恋体験を逆に描いてみたとこの曲のメイキングについて語っていて、その早熟なアーティスト性と資質をよく物語るものにもなっている。さらにそれに続いたシングル“Blow Your Mind (Mwah)”も、「素のわたしが好きになれないってどういうこと?」と相手をぶっとばしていく内容で、デュアのキャラクターとアーティスト性をよく打ち出すものになった。
Dua Lipa - Hotter Than Hell
その一方で、孤独への恐怖から喧嘩ばかりしている相手をどうしても求めてしまう切なさをハウス・トラックとして歌い上げる、オランダのDJマーティン・ギャリックスとのコラボレーション“Scared to Be Lonely”を形にしてみせた後、今年の6月にファースト・アルバムをついにリリース。
アルバムはこれまでのデュアのイメージを忠実に打ち出したものとなったが、シングルの“New Rules”でも歌われているように、デュアの打ち出すバッド・ガールや強面女子としてのイメージはあくまでも逆境にあって自分を鼓舞していくための応援ソングとしてのものだ。それがよく伝わったのか、このシングルはデュアにとって初のイギリス・チャート1位曲となった。なお、ソロの女性アーティストとしてのシングル1位は2015年のアデルの“Hello”以来のことだった。
Martin Garrix & Dua Lipa - Scared To Be Lonely
ここまで至ったうえでのサマーソニック出演だったので、とても素晴らしいものを観たという印象は間違いないものだったし、クール・ビューティのようでいてどこまでもホットなパフォーマンスを繰り広げてみせたあの日のデュアのステージは、まさに自身の表現の表出だったのだということが彼女の軌跡を改めて振り返ってみるとよく分かる。
直近のリリースは、ワシントンDC出身のMC、ワーレイの“My Love”への客演で、冒頭の客演ながらもなかなかの存在感を伝えてくれるのがとても頼もしい。曲のプロデューサーはディプロなので、ディプロの好みによる起用なのは間違いないし、ディプロもしくはメジャー・レイザーとの共演も近々必至だろう。(高見展)