10-FEET、『Fin』限定盤DVD収録「京都大作戦2017」中断から再開までの奇跡の140分の舞台裏について
2017.11.13 17:30
10-FEETの新作『Fin』はアルバム本編もさることながら、限定盤DVDに収められた映像の内容に震える。すでにたくさんの人が観たと思うけれど、あらためてそのことを書いておきたい。他でもなく、「京都大作戦2017 ~心の10電!10執念!10横無尽にはしゃぎな祭!~」3日間の、1時間26分に凝縮されたドキュメンタリー映像のことである。
The BONEZが仕掛けたドッキリとか、Dragon Ash・Kjの素晴らしいMCとか、湘南乃風×10-FEETの円陣とかスカパラのときのTAKUMA早着替えとか、見どころはたくさんあるのだけれど、やはり特筆すべきは、大作戦3日目の雷雨によるイベント中断、そして再開から感動的なフィナーレという一連の流れだろう。僕はこのとき、終演直後にこんなブログ記事を書いている。
マキシマム ザ ホルモンの演奏中、沸騰するフィールドの彼方にはっきりと見える落雷や、フェス中断の最中に舞台裏で慎重かつ緊迫したムードで進められる調整の様子を、カメラは捉えている。10-FEETの3人がステージに立ってオーディエンスの前で再開を宣言したとき、会場の使用時間リミットは1時間弱というところまで迫っていた。ホルモン・ナヲが「俺たちは今、伝説の中にいるーっっ!!」と叫んで奇跡の時間が始まったのは、DVD映像を観てのとおりだ。
スタッフ総出の真剣さが滲み出る高速転換、そしてROTTENGRAFFTYがたった3曲に意地を込める豪放なパフォーマンスで見事にバトンを繋ぎ、10-FEETは残り時間10分でどの曲を演奏できるか、ギリギリまで相談しながらステージ袖から飛び出してゆく。ファストな“DO YOU LIKE…?”、ロットンとMWAMのツインボーカルが参加して歌声をリレーする“その向こうへ”、そして出演者たちが傾れ込む歓喜の“CHERRY BLOSSOM”というパフォーマンスでは、アーティストたちもオーディエンスも、心からの笑顔を見せているのが確認できて嬉しい。
演奏が再開されないまま3日目が幕を閉じても、おかしくはない状況だった。天候と、限られた時間。人の力ではどうにもならないはずのものと向き合い、格闘し、悔しさを噛み締めながら掴み取った歓喜だった。出演アーティストやフェスのスタッフには、頭が下がる思いがする。
ただもう一点、ここで触れておきたいのは、会場にいたオーディエンスたちの忍耐と協力だ。来場者の安全を優先して、屋内やバス車内への一時避難が行なわれたのだが、このエリアへと通じる動線は大勢の人が一斉に移動できるほど幅広いものではない。雨に打たれ、雷鳴にさらされ、フェス再開の目処もまだ立たないというときに、多くの人々が避難の順を待ってじっと堪えていた。不安や焦りの中でも、喚き出すような人はひとりも見当たらなかった。2万人の中に、気の短そうな奴はいくらでもいるのに、である。誰もが、少しでも良い展開を望んでいたから、そうしたのだろう。
あのときのオーディエンスの対応ぶりがなければ、「京都大作戦2017」の3日目はまったく違う結末を迎えていたはずだ。フェスの運営に関わる人ほど物事を厳しくジャッジするから、あの3日目を成功と語る人はいないかもしれない。でも僕は、成功だったとはっきり記しておきたい。そしてその成功体験が日本のフェス文化にもたらす財産は、計り知れないほど大きい。あの場に居合わせたすべての人がそのことを誇りに思い、また身近な人にその経験を伝えてくれることを願うばかりだ。(小池宏和)
※記事初出時、事実と異なる記述がございました。訂正してお詫び致します。