ミセスは新曲“Love me, Love you”で聴く人の未来まで欲張りなくらい彩った

ミセスは新曲“Love me, Love you”で聴く人の未来まで欲張りなくらい彩った
Mrs. GREEN APPLEは、とても欲張りなバンドだと思う。

今回の最新シングル『Love me, Love you』を聴いて、前々から感じていたことが、はっきりした。

初の全国流通盤となった『Progressive』、メジャーデビューミニアルバム『Variety』では、若さとそれゆえの瑞々しさ、明るさがふんだんに詰め込まれ、代表曲となった“StaRt”など、聴いてて思わず笑顔になるような曲がとても印象的だった。そして初フルアルバム『TWELVE』では、まだ二十歳の若者がここまでカラフルな楽曲を作れるなんて……!!と、大森元貴(Vo・G)をはじめとしたメンバーのその彩り豊かな感覚と才能に驚いた。2枚目のアルバムで、自身の名前をつけた『Mrs. GREEN APPLE』を聴いた時、相当、その音楽性が深く強くなっていることにまた感嘆した。と同時に、1年でここまで化けるとは、と、Mrs. GREEN APPLEという音楽モンスターに正直身震いした。

その後、『どこかで日は昇る』、『WanteD! WanteD!』とタイアップが続き、『WHOO WHOO WHOO』を配信リリース。特に“WanteD! WanteD!”、“WHOO WHOO WHOO”はEDM色が強く、ミセスの挑戦心と、自分たちが置かれている境遇への反抗心、そしてリスナーへの試す心が感じられた。こう書くと悪く言っているように見えてしまうと思うが、それは真逆で、ミセスは早くにメジャーデビューをしているから、きっと自由にできない時もあって、それが今、やっとチャレンジできているのではないかと感じた。
“WHOO WHOO WHOO”でのノリノリな感じは、今までのミセスを聴いてると、「!?」とも思うし、「なるほどそうきたか」とも思えた。聴けばもう絶対的にテンションは上がるし、これを大勢と盛り上がれる場所で流せば、みんな一斉に踊りだす姿が目に見える。けれど、今までのミセスの楽曲の歌詞は、元気になるような、背中を押してくれるようなものが多かったから、この曲は歌詞が少なく、そういう意味はあまり感じない。本当にただ音楽を聴いて楽しく盛り上がることが目的だと訴えるような、ここに来て音楽そのものの意味を突きつけるような楽曲だった。

そして最新曲“Love me, Love you”だ。管楽器などを用い、いわゆるビッグバンドのような音楽が、エンターテインメント感をより一層引き立てていて、壮大な音楽に仕上がっているとともに、きっと大人の人にはどこか懐かしさを感じる曲なのではないだろうか。
ミセスの音楽はもともとゴスペル色が強く、たくさんのハーモニーが重なる曲が多い。そもそも、そのルーツのブラックミュージックは、現代におけるさまざまなジャンルの音楽に影響を与えている。つまり、ブラックミュージックは現代の人の根源に流れている音楽とも言える。だからか、ミセスの音楽を聴くと、「音を楽しむ」という原初の意味が身に染みる感じがするのだ。
前作“WHOO WHOO WHOO”では、「何も難しいこと考えずに楽しもうぜ」という感じだった。今作“Love me, Love you”は、壮大な音楽で、年齢関係なく、音楽に身を委ねるような楽曲になったと思う。

ミセスは現在21歳~26歳と社会的にはとても若く、その若さでここまで懐の大きな音楽を生み出せるのかと思った。しかし、それは必然なことで、ミセスが目指している場所が、とても大きな場所だからだ。今回の楽曲は、具体的に、たしかに力強く、そして大きな一歩を踏み出した曲だということが証明されていると思う。
また、ミセスのファンは若い人も多い。特に学生は、リアルタイムで背中を押してもらったり元気をもらったりしているだろう。しかし、この楽曲は少し違うかもしれない。背中を押すのではなく、その若い人たちを、一緒に大人へと導いてくれるような楽曲になっているように感じる。だから、今若い人たちは、例えば10年後20年後、この曲を聴いてみてほしい。きっと今とは違う感動を抱くと思う。
さらにMVのパーティー会場で、バンドが2ステップをゆるやかに踏みながら歌い演奏する姿は、往年のバンドの演奏を思い起こす。このことからも、若い人からその親、さらにその親の世代まで、聴いて楽しめる楽曲になっているのではないかと思う。
つまり、この楽曲は、ファンの未来、そして世代を超えて魅了してしまったのだ。どうだろう、なんて欲張りなバンドだとは思わないか。


以前、ミセスがテレビのインタビューで『紅白』出演が目標と話していたのを観た。『紅白』といえば、それこそ老若男女、普段あまり音楽を聴かない人も観る、年末の一大特番だ。しかし、この“Love me, Love you”で、その舞台へ確実に大きく一歩、いやそれ以上近づいたと確信した。それは、先に書いたとおり、若い人、その親、さらにその親の世代まで、聴いて楽しめる楽曲になっているから。プラス、今の若い人が何十年後に聴いても、好きになれるであろう曲だからである。

さらに、Mrs. GREEN APPLEは、自分たちをとても客観的に見ることができているバンドだとも思う。自分たちの置かれている境遇、求められているもの、どんな人が自分たちのファンか、目指す場所に向かうためにどうしたら良いか。それがちゃんとわかっているからこそ、このタイミングで“Love me, Love you”という、ミセスにとって新たな門出となるような曲が生まれたのだと思う。だから、若いファンには、今だけでなく未来やその親をも魅了する曲を、また、EDM調の曲から新たに脱皮するにはどんな曲を出すべきか、今のミセスが新たなステージに向かうにはどのような曲にするべきか――それが、地に足をどっしりと付けた、確実な一歩となる曲になったのだ。

ミセスはこのシングルで、大きなステップを踏んだ。大きな舞台への階段を一つ越えた。そして、聴く人の未来まで魅了してしまった。
ミセスはこれからきっと、もっと大きなバンドになるに違いない。『Love me, Love you』はそう確信できる会心の一撃となった。そして、彼らのこれからの活躍がまた楽しみになった。(中川志織)
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