エレカシ映像作品ボックスの「NHK Performance Selection」が伝えるテレビで「闘うエレカシ」

エレカシ映像作品ボックスの「NHK Performance Selection」が伝えるテレビで「闘うエレカシ」
まさにメジャーデビュー30周年記念日の3月21日、『Life TOUR 2002』(2002年)から『エレファントカシマシ デビュー25周年記念 SPECIAL LIVE さいたまスーパーアリーナ』(2014年)までエレファントカシマシの既発ライブ映像作品5本が初Blu-ray化&再発リリースされた。

そして、上記5作品と同時発売されたボックスセット『30th ANNIVERSARY Live Blu-ray Box』。上記5作品と『エレファントカシマシ コンサート1998日本武道館「風に吹かれて」』(1998年)の初Blu-ray化盤を合わせた6作品・7ディスクに、さらにボーナスディスク2枚を加えた、計9枚組に及ぶ内容だ。
中でも、ここではそのボーナスディスク2枚のうち「Disc 8」、「NHK Performance Selection」と題された1枚に注目したい。

『ポップジャム』、『トップランナー』、『SONGS』、『The Covers』といったNHKの番組でエレファントカシマシが披露してきたパフォーマンスを収録した「NHK Performance Selection」。今回が初商品化となる同ディスクの収録内容は以下の通り。

01.孤独な旅人(1996.10.4『ポップジャム』)
02.孤独な旅人(1997.1.22『ポップジャム』)
03.明日に向かって走れ(1997.2.2『ポップジャム』)
04.今宵の月のように(1997.9.25『ポップジャム』)
05.風に吹かれて(1997.12.19『ポップジャム』)
06.はじまりは今(1998.5.24『ポップジャム』)
07.デーデ(1999.5.7『トップランナー』)
08.真夜中のヒーロー(1999.5.7『トップランナー』)
09.so many people(2000.2.2『ポップジャム』)
10.あなたのやさしさをオレは何に例えよう (2002.6.11『ポップジャム』)
11.悲しみの果て(2014.1.25『SONGS』)
12.俺たちの明日(2014.1.25『SONGS』)
13.RAINBOW(2015.11.16『The Covers』)
14.赤いスイートピー(2017.3.6『The Covers』)
15.喝采(2017.3.6『The Covers』)
16.ファイティングマン(2017.7.13『SONGS』)


冒頭から「“孤独な旅人”が立て続けに2曲?」と驚かれる方も多いと思うが、前掲のダイジェスト映像でマイクスタンドを蹴っ飛ばしているのがまさにその“孤独な旅人”の1曲目=1996年『ポップジャム』出演時の映像だ。そのメロディアスな曲調とは裏腹に、演奏パートが当て振り収録なのを逆手に取って、ハンドマイクの宮本浩次がやりたい放題。曲の最後には、舞台を飛び降りた宮本がカメラにポーズを決める後ろで、ギターも持たず上半身裸の石森敏行が所在なさげに立ち尽くす――という、TV的には実にシュールな画が生まれるに至っている。2曲目の“孤独の旅人”はその翌年の同番組で、宮本もギターを構えた完全生演奏スタイルで、一転してストイックな空気感の中で披露されていることがわかる。

テレビ仕様の荒ぶる闘争精神が逆噴射した1曲目の“孤独な旅人”しかり、大ヒット曲“今宵の月のように”を歌い上げた際の張り詰めたテンションしかり、たった1曲で心身を燃やし尽くすような絶唱を見せた“so many people”、“RAINBOW”しかり、一曲入魂の迫力に満ちたカバーを聴かせていた『The Covers』の“赤いスイートピー”、“喝采”しかり……万人注視のテレビという場所をエレカシが/宮本が、自分たちの歌を広く届ける「メディア」であると同時に、己の全存在の是非が一瞬でジャッジされる「戦場」として位置付けてきたのだろう――ということが、その映像の鬼気迫る視線からもリアルに伝わってきて、何度観ても感激と戦慄に襲われる。

この充実の内容を今からでもひとりでも多くの方に観ていただきたいところだが、残念ながら『30th ANNIVERSARY Live Blu-ray Box』は完全受注生産盤のため、販売予約受付はすでに終了、「NHK Performance Selection」を新たに入手する術は少なくとも今の時点ではない、というのが現状だ。
その21年間の中で刻一刻と精悍さを増してきたメンバーの佇まいの変化とともに、「エレカシは時代といかに向き合ってきたか」をあまりにも鮮明に物語っているこの1枚。ぜひとも単独での商品化を強くお願いしたいところだ。(高橋智樹)
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