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    カニエ・ウェストとキッド・カディの12年にわたる関係性を振り返る。カディのBAPE店員時代の出会いや対立、そして新作『Kids See Ghosts』発表まで

    • カニエ・ウェストとキッド・カディの12年にわたる関係性を振り返る。カディのBAPE店員時代の出会いや対立、そして新作『Kids See Ghosts』発表まで
    • カニエ・ウェストとキッド・カディの12年にわたる関係性を振り返る。カディのBAPE店員時代の出会いや対立、そして新作『Kids See Ghosts』発表まで

    6月8日にリリースされたカニエ・ウェストキッド・カディの新作『Kids See Ghosts』。同新作のリリースに際し、「SPIN」が2人の長きにわたる関係を振り返っている。

    今回の新作『Kids See Ghosts』はカディとカニエのユニット、Kids See Ghosts名義のもので、カニエにとっては自身がプロデュースしたプシャ・Tの新作『DAYTONA』、自身の新作『Ye』に続く新作だ。さらに、ジャケットのアートワークを自身の2ndアルバム『グラデュエーション』を手がけた村上隆に託したことも明らかになっている。

    カニエ・ウェストとキッド・カディの12年にわたる関係性を振り返る。カディのBAPE店員時代の出会いや対立、そして新作『Kids See Ghosts』発表まで

    それだけカニエの強い思いが込められた今回のプロジェクトだが、そもそもカニエとカディの縁は古く、2008年に無名時代のカディを見出したのもカニエだったことで知られている。

    「SPIN」によると2人の出会いは2006年にまで遡るとのことで、2009年に同誌に掲載されたインタビューの中では、カディがカニエとの出会いを次のように振り返っている。

    レコード店でCDを物色してたら右目の隅にイエス様のような存在を感じて、視線を上げてみたらカニエ・ウェストだったんだ。


    カディはその場で自己紹介し、自身の音楽を聴いて貰いたいとも申し出たのだとか。カニエに丁重に断られたというカディは、めげずに「いつか近いうちに仕事をすることになるから」と伝えたという。

    なおカディは当時、BAPEのニューヨークの店舗で店員として働いていて、この時にもカニエと遭遇したことをその後語っている。その際、カディはカニエが買ったジャケットの盗難防止用のブザーを取り外すのを忘れてしまい、ひと騒動になったのだという。

    やがて2008年にカディはミックステープ『A Kid Named Cudi』をリリースし、この中の"Day ‘n’ Night"がカディにとって初のヒット・シングルとなる。これを聴いたカニエはカディを自身のレーベル、グッド・ミュージックに契約し、すぐにボーカルや作曲のコラボレーションを始めることとなる。


    カディとのこのコラボレーションは、もともとジェイ・Zの『ザ・ブループリント3』用に始めた作業だったという。結果的にはこの時に完成した"Heartless"や"Welcome to Heartbreak"など多くのトラックをカニエの4thアルバム『808s & ハートブレイク』に収録したことで、カディの名前を広く知らしめることにもなった。


    そして2009年、カディは1stアルバム『マン・オン・ザ・ムーン:ザ・エンド・オブ・デイ』をグッド・ミュージックからリリース。プロデューサーにはカニエのほか、無名時代からカディと組んできたEmile Haynie、さらにカニエのマネージャーだったPlain Patらが名を連ねている。

    カニエは2009年以降も『808s & ハートブレイク』の作業を行ったハワイで精力的にレコーディングを続け、カディもこれに参加。これが2010年の『マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー』となり、カディは"Gorgeous"や"All of the Lights"に参加した。

    その一方でカディも2ndアルバム『マン・オン・ザ・ムーン2 : ザ・レジェンド・オブ・ミスター・ラジャー』をほぼ同時期にリリースしたが、これにはカニエは参加していない。またこれ以後、カニエは今回の『Kids See Ghost』までカディの作品に参加していなかったが、カディの方はカニエの作品に参加し続けている。


    2010年、カニエは自身の『マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー』のリリースより数ヶ月前から「G.O.O.D. Fridays」と題した音源無料配信キャンペーンを開始。アルバムには収録されない音源を無料で配信するということで大きな話題を呼んだが、この時配信された"Good Friday"、"Christian Dior Denim Flow"、"The Joy"にもカディが参加していた。

    その後2012年にカニエはグッド・ミュージックのアーティストによるコンピレーション・アルバム、『カニエ・ウェスト・プレゼンツ・グッド・ミュージック・クルーエル・サマー』をリリース。同作収録曲の"The Morning"でカディはレイクウォン、プシャ・T、コモンらと共に参加した他、カディのソロ・トラック"Creepers"も収録されている。

    そして2013年、カディは3rdアルバム『Indicud』をリリースする。しかしこのリリース直前に、カディはこの作品を最後にカニエのグッド・ミュージックから離れることを表明した。

    その一方で、カニエの話題作『イーザス』にはカディも参加し、"Guilt Trip"で作曲とボーカルの両面でコラボレーションを果たしている。

    2016年にはカニエが問題作として物議をかもした『ザ・ライフ・オブ・パブロ』をリリース。カディは"Waves"、"Father Stretch My Hands Pt.2"に参加した。

    しかし、カディはこの年9月に入って、30人ものソングライターを抱えているとしてドレイクらをTwitterで批判した上で、そんなドレイクとコラボレーションをしたカニエも批判。

    反対にカニエは「イェ(自分)が誰と曲を作ろうが誰にも指図はできない」と一蹴したが、その後、カディはカニエは自分の兄弟であり、いつでも元気かどうか気にしているともツイートしていた。

    そして翌月10月、カディは鬱や自殺衝動に悩まされていたことから入院治療を受けていることをFacebookで明かす。さらに11月にはカニエも『ザ・ライフ・オブ・パブロ』を引っさげた「Saint Pablo Tour」で、ライブ中の長広舌が常軌を逸しているとしてブーイングに見舞われるようになり、そのままライブをやめてしまうなど問題行動が続発。やがてツアーは中止となり、カニエの入院も明らかになった。



    その後、2017年の11月にはカディのライブにカニエが飛び入り参加するというニュースもある一方で、カニエがワイオミング州で山籠もりをしていて、ここに無数のアーティストが集結しているという噂も囁かれていた。

    そして2018年の4月、SNSから長らく遠ざかっていたカニエがTwitterに復帰。他のさまざまな自身のプロジェクトと並んで、カディとのプロジェクトであるKids See Ghostsとしてのアルバム『Kids See Ghosts』を予定していることを発表し、同新作を6月8日にリリースした。




    カニエ・ウェスト『Ye』のレビュー記事もぜひ合わせてご覧ください。

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