本作は、監督をして「(こんな映画は)普通は作れない。狂気の沙汰です(笑)」と言わしめるほど、ストーリーや役者陣の演技、スケールなど、すべてにおいて過激で型破りであるという。この鼎談では、そんな本作に3人がどのように向き合ったのか、主演、脚本家、監督というそれぞれの立場で語られている。
「いい意味で、自分がこれまでやってきた役者の生理のようなものを、いかに捨てて再構築するかということが、この作品に綾野剛として挑む醍醐味になると思いましたし、もう掛十之進として生きればいいと思っていたんです。精神的疑問は全部捨てました」(綾野)
「町田さんの小説は、最初は少し読みづらく感じるから、一生懸命読んでいくんだけれど、そうするとだんだんリズムがつかめてきて面白くなっていく。今回の脚本もそういう感じにしたいと思っていたんです。原作の絶対入れたほうがいいよな、って思うフレーズはそのまま入れ込んだりしました」(宮藤)
「役者陣も宮藤くんも、やるからにはベスト・オブ・ベストで行きたいと思ってオファーしたんですけど、まさか全員出てくれるとは思ってなかったです(笑)。(中略)みんな適材適所で、無理があるキャスティングがないんですよ。その人が持っている力の一番旬で、生き生きしているところを掬い取るってことをしていました」(石井)
このほかにも、それぞれの視点で本作の魅力について語り合われるなど、ここでしか読むことのできない貴重な内容がたっぷりと掲載されている。この異色作がいかにして誕生したのか、その真髄に迫った、作品への期待がさらに高まるテキストだ。