ナイン・インチ・ネイルズが新作で描いたアメリカの真実とは? 「世界一パワフルな国だったが、今では恥さらしになってしまった」

ナイン・インチ・ネイルズが新作で描いたアメリカの真実とは? 「世界一パワフルな国だったが、今では恥さらしになってしまった」 - 『rockin'on』2018年8月号より『rockin'on』2018年8月号より

6月22日に2016年の『ノット・ザ・アクチュアル・イベンツ』、2017年の『アッド・ヴァイオレンス』に続く3部作の最終章としてニュー・アルバム『バッド・ウィッチ』をリリースしたナイン・インチ・ネイルズ

『ロッキング・オン』8月号では、ニュー・アルバムについてアッティカス・ロス、そしてトレント・レズナーへ訊いたインタビューを掲載。

3部作のラストを飾るアルバムがいかにして生まれたのか、そのすべてを語っている。

アルバムについて、どのように制作が始まったのか問われたトレントは、その経緯や背景を以下のように答えている。

君の質問に答えると、このレコードで俺達は、珍しく、数ヶ月間煮詰まっていた。『アッド・ヴァイオレンス』(17年)を作り終えたけど、実はあのレコードは作るのが困難な作品で、ミックスが難しかったから、すごく神経質になっていたんだ。

だけどその後ショーをやり、満足して盛り上がったから、そのまま今回のレコードを作ろうとした。当初は『アッド・ヴァイオレンス』の続きとして作ろうとした。数ヶ月かけて曲を作っていたんだけど、言葉にはしなかったが、ふたりとも、「まあまあかな」と思っていた。

でも、どうしても満足できなかったし、新しいと感じられるサウンドにならなかったし、前のレコードの続編を作る必要も感じなかった。だから、自分達が期待していたよりも良いものにはなっていなかったんだ。

(中略)それで、とうとう言ったんだ。「これは最悪だ。絶対もっと良い作品ができるはずだ」ってね。「とりあえず今は、レコードを作るのは止めよう」って。レコードなんて無理に出さなくていい、と思った。それで結局、「ファック! こんなの全部ダメだ。全部捨ててしまえ! もうこんなの聴くのは止めよう」って全曲捨ててしまった。

でも、そうしたら今度は、めちゃくちゃ怒りが湧いてきて、「録音」ボタンを押して、半狂乱になったみたいなドラムビートを鳴らしていたんだ(笑)。そんな風に録音し始めたからサウンドの質は全く良くなかった。

それで、ふと見たら、そこにサックスがあって(中略)久しぶりに吹いてみたら、なかなかクールなサウンドに聴こえたから、1時間くらい、その気が狂ったようなドラムビートに合わせて演奏してみた。そこで一旦止めて、スタジオから出て、数時間後に戻ってきたら、彼(アッティカス)がそれをアレンジしていて、それが、「これが新しいレコードだよ!」と思えるものになっていた。

(中略)ドナルド・トランプがアメリカを象徴しているということ自体が、“真実”の終焉だと思うし、民主主義の終焉だ。そしてメディアが武器化し、例えばアメリカにはFOXニュースというメディアがあるんだが、それは100%がウソで、プロパガンダだ。

なのに国の半分はそれに買収されている。世界一パワフルな国だったはずが、今では恥さらしになってしまっている。つまり、それがこのアルバムに描きたかった背景だ。


「音楽の世界がいつの間にか、4秒とか10秒とかのインスタグラムで見栄えの良いものとして変貌してしまった」と語り、「声を大にして何かを発言する人が少ないのは恥ずかしいことだ」と述べるトレント。

さらに、沈黙した音楽シーンはシーンですらないとまで言う彼は、その代わりに俳優やコメディアンがより反発しているように思えると語っている。

それに対し、インタビュアーが「ドナルド・グローヴァー(チャイルディッシュ・ガンビーノとか」と具体的な名前を出すと、トレントは「最高の作品だ」と答え、以下のように続けている。

だから何もできないわけじゃない。例えば“This Is America”のビデオはアメリカで莫大なインパクトを与えた。おかげで、全てがクソではないとみんな気付いたと思う。

もちろんどんな時代でもクソで現実逃避的なものは求められる。でも、今は90%がクソで、それがクールであるかのように推されている。でも同意できない。俺は、「俺の庭から出て行け」と怒鳴っている年寄りなのかもしれない。それでも構わない、マジでそう叫びたい。「俺のファッキン庭から出て行け! お前らのクソにはもう飽き飽きだ」って。


そんな怒りがナイン・インチ・ネイルズの衝動だと思うと尋ねられると、再びトレントは自分自身の意見を以下のように語った。

(中略)俺が、権威に反発する時は、俺がどう思うのかのみを通して描く。他の人達がどう思うのかを語る能力はないから。俺は、とにかく自分の思っていることを、本物の場所から吐き出す必要がある。それを聴いた人達が、理解できて、共感してくれるものであれば嬉しい。作曲のサイクルはいつでも「今の俺は誰なんだ?」という場所から始まる。「何が俺に影響を与えているんだ?」というね。

(中略)俺達は、それぞれが信じる神話のために戦うのを、もう止めるべきなんだ。なぜなら俺達はこの世界に短い時間しかいないから。全てがフラジャイルに思える今、お互いがお互いをファッキン助け合おうぜ、というね(笑)。そんなことが自分にとって大事だと思える日が来るとはこれまで思ってもみなかった。


インタビューではほかにも、「日本でのライブはいつだって俺達のツアーのハイライトだから」と、8月の「SUMMER SONIC 2018」、「SONICMANIA」での来日に向けてのコメントも。また、現地時間6月15日にラスベガスで行われた彼らの最新ライブ・レポも合わせて掲載している。

アメリカを中心に、世界の怒りを吐き出したアルバム『バッド・ウィッチ』を引っさげ間もなく来日するナイン・インチ・ネイルズ。

『ロッキング・オン』8月号掲載の同インタビューを読み、より深くアルバムを聴き込み、来日公演に備えてほしい。



ナイン・インチ・ネイルズの記事は現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
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