【ロッキング・オンを読む】レディオヘッド、NY公演を観た!【全文公開】

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長期にわたるワールド・ツアーを開催中のレディオヘッド。そのツアーは、2016年から現在まで、フェスのヘッドライナーも含め、世界各地でライブを行っている。

バンドにとって、2018年現在までの最新作は2016年にリリースされた9枚目のスタジオ・アルバム『ア・ムーン・シェイプト・プール』となっているが、現在のツアーでは同アルバムの収録曲はもちろん、これまで数年間ライブでは演奏されなかった過去の楽曲もフィーチャーされており、その内容も大きな反響を呼んだ。

本記事では、そんな開催中のツアーから7月にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われた全4公演をレポート。『rockin'on』9月号に掲載したニューヨーク特派員の中村明美によるロング・レポートの全文を、『rockin'on』未掲載のライブ写真と合わせてお届けする。

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「今週、全日程を観に来てくれた人、どうもありがとう。このライブは、これまで僕らが一緒にやってきた全てのファッキング・クレイジーな年月に起きたことのセレブレーションなんだ」。7月14日、NYのマディソン・スクエア・ガーデンでのトム・ヨークのコメントだ。レディオヘッドは7月6日から8月1日まで、約1か月にわたり北米ツアーを行った。NYでは、MSGで7月10、11、13、14日と4日間もライブを行ったのだ。

最新作の『ア・ムーン・シェイプト・プール』が発売となったのは2016年で、その時すでに全米ツアーは行っていたため、実は今回のライブの主旨がイマイチ分からないでいた。しかしトムがまとめてくれたように、何と結果的にはレディオヘッドのキャリア全体をセレブレートするという贅沢な内容だったのだ。

“祝祭”なんて言葉をトムが使うこと自体珍しい気もするが、アルバム発売直後というタイミングで、アルバムを証明するためのライブではないというのも良かったのだと思う。さらにトムは続けて「4日間できたおかげで、毎日セットリストを考えるのも楽しかった」と言っていた。

実際、4日間のセットリストは日々大きく変わった。勢いで4日分のチケットを買った自分はバカなんじゃないかとも思ったが、トムの言葉に救われた。それに何より、これまで何度もレディオヘッドのライブは観ているが、今回はこれまでにないカタルシスのあるあまりにエネルギーに満ちたライブだった。そもそも、初日の最後がいきなり“ザ・ベンズ”だったのだ! 前回のツアーでは“クリープ”を演奏することも多く、過去の呪縛から解放されたように感じたが、今回はさらにその先に一歩踏み込んだものだった。なにしろ、“ザ・ベンズ”ではフィル・セルウェイが、1、2、3とリズムを取った後、トムがギターをかき鳴らした瞬間にライトが真っ赤に。その後フロントの3人、トムと、ジョニー・グリーンウッドと、エド・オブライエンが前奏でギターを弾くなり会場が「オーーー、オーー、オー、オー!」という大合唱になったのだ。

それは、僕らは呪縛から解放された、と知らせるためのものではない。今このギターを鳴らすことが観客から求められている、またはカタルシスとともにライブを終わらせたいというバンドの積極的な意思、そうした必然のもとに鳴っていたとしか思えなかったのだ。その瞬間に少し前に観たU2のライブをふと思い出してしまった。あまりに対照的だったからだ。U2は、これまでどんな悲惨な状況でも希望の旗を掲げ、アンセムを歌い上げてライブを締め括ってきたバンドだ。しかし、最新のライブに限っては最もU2らしくないものだった。ボノがメインステージではなく、第2ステージから一人でトボトボと階段を下り、観客が大合唱するわけでもなく、ゆらゆらと揺れる残された一つの電球を眺めて終わるというものだったからだ。

U2ですら希望があるのかどうか答えられないというこの終わり方が、2018年をあまりに象徴していると思った。一方で、これまで悪い予感について歌ってきたようなレディオヘッドは、その悪い予感が的中した最中にいる現在、その閉塞感を歌うのではなくて、そこに一歩踏み込み突破する曲を歌おうとしたのだと思うのだ。U2とレディオヘッドのステージはあまりに対照的な終わり方だったが、しかしどちらも2018年のアメリカを歌う象徴的なライブだったと思う。

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今回のレディオヘッドのステージは、ライブが始まった瞬間から今を歌っているとしか思えない歌詞が次々に耳に突き刺さってきた。例えば、4日間で唯一同じだった幕開けの曲“デイドリーミング”で、そのあまりに美しく哀しい曲の前奏のピアノが始まると、トムは暗闇の中でステージの空気と観客の空気を感じながらゆらゆらと揺れていた。そこに白い光が差した瞬間にトムが歌うのは、《夢見るものは/いつまでも学ばない》である。

この曲の解釈は、現実逃避、生、死、トムとパートナーとの別れ、またはMVを観ると、バンドがくぐり抜けてきたキャリアについてなど、色々と見方はある。しかしこの日はもう、今のアメリカの理想の崩壊を歌っているようにしか聴こえなかった。《もう傷は負ってしまったのだから》という歌詞も、今の政府の崩壊を言っているようであり、またその政策による地球環境の崩壊を言っているようでもあり、心が痛かった。そして初日は、そのムードをいきなり断ち切るようなものになっていた。

2曲目が〝フル・ストップ〟だったのだが、そこで歌われるのは、《君は本当に全てを台なしにしてしまった》、《真実は君をめちゃくちゃにするから》である。正に、オバマ政権で勝ち得たと思っていた理想はめちゃくちゃにされ、今目の前にある真実に日々心が張り裂けているし、これも環境問題に当てはまる。

かと思えば、2日目と4日目に演奏された〝エグジット・ミュージック(フォー・ア・フィルム)〟では、《君の息が止まってしまえばいいのに》と政治家を思い、《息をし続けるんだ/一人ではできないから》、《歌が僕らを温め続ける》という歌詞で、冷え切った我々の今の状況を指しているように思えた。

そして極め付きは〝ノー・サプライゼズ〟だ。4日中3日、それぞれ違う順番で演奏されたのだが、とりわけ初日にアンコールの“ザ・ベンズ”の前に演奏した時、トムが「僕らは昔はステージで長い時間かけて政治についてべらべらと語ってきた。でも、最近は」と言った後、大きくため息をつき、頭を右に左に降ると、観客からは、「最悪だ!」とか「クレイジーだ!」などの叫び声が上がっていた。

そしてトムが「あと一体何度同じことを語らなくちゃいけないんだ。そしてあと一体何度人はそれを忘れてしまうんだって、思うようになったよ」と辛そうに言い、歌い始めると、《政府を倒してしまえ/奴らを僕らを代弁しない》というところでどの日も同じように、会場から「うぉおおおおおおお!!!」という曲のひんやりしたトーンとは真逆の熱い地響きのような歓声が、拳とともに挙がっていた。

初日はそこで大大大歓声になった後、トムが「今日は来てくれて本当にありがとう」と言って“ザ・ベンズ”が始まったわけだから、みんな気が狂ってしまうほどだった。

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