小袋成彬WWW Xワンマンで、彼の素晴らしい才能とセンスに恍惚とした

小袋成彬WWW Xワンマンで、彼の素晴らしい才能とセンスに恍惚とした
正直、この原稿を書いている今もなお、余韻が体の奥底で鳴り続けている。小袋成彬、チケット即完の初の東阪ワンマンツアー、渋谷WWW X公演。個人的に彼のライブを観たのはこれが初めてではないけれど、それでも彼の音楽的センスや歌の才能に再び心を打たれまくったし、それでいて彼のさらなる魅力を見出すこともできたし、改めて小袋成彬という人物の非凡さを身にしみて知らされることとなった、素晴らしい公演だった。

今回のライブは、これまでの彼のライブにさらに磨きがかけられたものになっていたと思う。1曲目から5曲目までをサポートメンバーなしで、たった一人で(しかもマイク一本で)パフォーマンスし、自身のボーカルの低音の温かみやファルセットの美しさなど、歌単体の色香でオーディエンスの心をガッと掴みにいったこと。既発曲のサウンドに時に細かく、時に大胆なアレンジを加え、アルバムに収録されている音源とはまた違う美点を引き出したこと。ステージに登場したときから歌を歌うこと=言葉を届けることだけに一点集中しているような彼が、この日は時々踊るような仕草をしてみせたり、サポートメンバーとアイコンタクトをとったりして、開放的な雰囲気を漂わせるシーンもあったこと(特に“GOODBOY”あたりの彼がノリノリだった気がする)。彼の本領に再度脱帽しつつ、表現のさらなる発展を匂わせるような場面が何度も訪れたライブだった。

そして何より、この日聴かせてくれた新曲群がとてつもなく素晴らしかった。特に“愛の漸進”から繋がったラストナンバーの新曲はもう、美しすぎて呆然としてしまったほどだ。この新曲には小袋自身によるコーラスが幾重にも重ねられ、さながらゴスペルのような響きを持つフレーズがあったのだが、その部分が放つ神秘性が、彼が只者ではないことをまざまざと物語っていた。愛することの喜びを美麗なファルセットで畳み掛ける“愛の漸進”の余韻も相まって、とめどない感動で胸がいっぱいになってしまった。

MCなし、アンコールなし、1曲目からラストまでシームレスに繋がれた約60分間の極上のステージを見せてくれた小袋成彬。願わくばこの音楽の零れんばかりの美しさを、もっと広く、より多くのリスナーに知らしめていってほしい。(笠原瑛里)
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