ドラマ『獣になれない私たち』に私たちが期待せずにはいられない理由

10月クールのドラマのスタート時点の評判がだいぶ出そろってきましたが、個人的には野木亜紀子の脚本による『獣になれない私たち』の第1話に完全にやられました。
このドラマ、たぶん第1話の中盤あたりでは、あまりに日常の仕事や恋愛や生活の悩みと直結し過ぎてしまって「ストレスから解放してくれるドラマからは遠い」と感じていた人が結構いるんじゃないだろうか。
でも最後まで観て、今、それとは真逆に近い気持ちで第2話を待っているという人が多いんじゃないだろうか。

このドラマのキーとなるのは世の中の「理不尽」。
職場の理不尽も、恋愛や結婚にまつわる理不尽も、電車の中の理不尽も、「こんなのドラマの中の話だよね」では全くない、「大きく言えば本当にこんな世の中だよね」な理不尽ばかりでこのドラマの世界はできている。
でも「世の中ってこんなにも理不尽」っていうドラマなんて正直、観たくない。
何しろ現実のニュースと、現実の経験が教えてくれる理不尽だけでも私たちはお腹いっぱいだ。
ただし第1話の最後まで観ると、新垣結衣が演じる晶がその理不尽に苛まれてすり減っているのも、松田龍平が演じる恒星が理不尽な世界の一部=バカになれたら楽なのにとニヒルに笑っているのも、このドラマのプロローグに過ぎなかったということがわかるのだ。
その理不尽に抗うためのオピニオン&エグジット、つまり晶が業務の「改善要求書」を叩きつけ、コンプライアンスのためでも異性に媚びるためでもない自分のためのファッションで出社したのが、このドラマの本当の始まりなのだ。
だからといって第2話から急激に話が明るく痛快になるわけではないだろう。
それでも晶と恒星がこのドラマの中でどう変わっていくのかは間違いなく「獣になれない私たち」に粘り強く希望を見せてくれるはずだ。
野木亜紀子自身が、どんな批判に対しても逃げることなく粘り強く正直に対応している姿からも、理不尽に負けないための糧を私たちに提供してくれるストーリーテラーだと感じる。(古河晋)
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