WANIMAの楽曲が「あなた自身」になる時――『SONGS』で明かされた「あるメカニズム」

「励ましたい、支えたいので、歌詞を間違えないようにしないと」

KENTA(Vo・B)は番組の冒頭で、笑いながらそんなコメントを残していたけれど、そこにはとても切実な思いが込められていたように思う。10月27日夜に放送されたNHK総合『SONGS』では、WANIMAの楽曲に出会って胸を揺さぶられた人々の、楽曲にまつわる大量のエピソードが番組に寄せられ、その応募者を招いたスペシャルライブが繰り広げられていた。

複雑な家庭環境で虐待を受け、家出を繰り返していたという25歳の男性は、働きつつ通信制の高校に通い、看護師になる夢を追っている。そんな彼にとっての大切な一曲は“シグナル”だ。

2017年の『WANIMA 18祭』のために制作されたこの曲の《好きにやって 駄目なら戻って来い》というメッセージは、かつて“HOME”で描かれていた《「何かあったらいつでも待ってる帰っておいで」と/その言葉だけ頼りにしてた》という歌詞と繋がっているように思える。つまり、かつて家族から貰い受けたメッセージが、巡り巡って「帰るべき場所=WANIMAの曲」となった人々に向けられたメッセージとして生まれ変わったのである。

5歳年上の兄を事故で亡くした男性は、その心の距離を“THANX”に埋めて貰っている。「仕事をサボっていたら、兄が見ていて怒られると思う」と彼は語っていた。そして、9月の北海道の震災に見舞われた女性は、恐怖心で寝付けない夜を“For you”と共に過ごしてきたという。この楽曲にまつわるエピソードを寄せた視聴者は、他にも10代から30代まで、幅広い世代が紹介されていた。

WANIMAの爆音を潜り抜けるグッドメロディと熱いビート、そして歌詞は、ただどこにも見当たらなかった価値や意味を届けてくるというよりも「あなたの中にいるもう一人のあなた」を呼び覚まそうとする。だから、WANIMAの楽曲はあなたにとって大切な曲になる。その曲はある意味であなた自身なのだから、大切に決まっている。今回の放送でライブ披露された3曲は、あなた自身だ。その歌詞を間違えるわけにはいかない、と、KENTAは告げていたのである。わずか30分ほどで、WANIMAとリスナーのコミュニケーションのメカニズムが明かされる、濃厚な放送回であった。(小池宏和)

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