Official髭男dismの音楽はここから生まれた! 地元・島根への里帰り密着特番を観て

Official髭男dismの音楽はここから生まれた! 地元・島根への里帰り密着特番を観て
バンドにとっての「地元凱旋ライブ」というものを、これまでも何度か目撃する機会があったけれど、いつも特別な空間になるなと思う。「ただいま」と「おかえり」が自然に飛び交い、客席にはメンバーの古くからの友人や恩人、家族が駆けつけることもあって、メンバーもまたいつもとは違う素の表情を見せたりする。それが、たとえ自分の地元でなくても、バンドにとっての故郷=帰る場所は、いつまでも大切にし続けてほしい。NHKで放送されたOfficial髭男dismの特番『髭男“ヒゲダン”ふるさとへ』を観て抱いたのも、そんな感想だった。

この特番は、もともと昨年末にヒゲダンが全国24ヶ所をまわったワンマンツアー「Official髭男dism one-man tour 18/19」の後に中国地方限定で放送されたものだ。地元・島根県民会館で開催されたツアーファイナル公演に密着しつつ、バンドゆかりの地を巡るロケやインタビューを交えた貴重な内容が大きな反響を呼び、全国放送されることになった。NHK広島放送局の制作ということもあり、山陰から全国区の人気バンドへと成長したヒゲダンの魅力を、地元ならではの目線で掘り下げる切り口に熱がこもっていた。

印象的だったのは、4年ぶりの里帰りでヒゲダンがインディーズ時代に活用していた米子の練習スタジオEARTH SONICKを訪れるシーンだ。そこで、藤原聡(Vo・Pf)のキーボードの師匠であり、ジェフ・ベックのコピーバンドを一緒に組んでいたというピアノ調教師の大江憲史さんと再会した。当時の藤原はドラマーでもあり、年の離れた地元の社会人アマチュアバンドに混じって、ジャズやフュージョンを演奏する機会も多かったという。ジャンルを越えて様々な音楽を吸収していた当時の藤原の経験が、現在のヒゲダンの血肉になっているのだ。番組のなかで藤原は「(自分が知っている音楽以外にも)素晴らしい音楽もあると知れたことが大きかった」、「自分の住んでいる町には音楽の師匠がいっぱいいて、すごく恵まれた環境だった」と振り返った。モータウンやソウルといった古いルーツミュージックを源泉にしながらも、世代を越えて、誰もが歌えて踊れるヒゲダンの垣根のないポップミュージックは、かけがえのない山陰の音楽環境によって育まれたのだ。

番組は、2015年に地元にいながらデビューを果たしたヒゲダンを日本海新聞が大きく取り上げていたことも紹介したあと、これまで支えてくれた人への感謝のメッセージを込めた“Stand By You”のライブ映像で締めくくった。藤原はこの曲を「俺たちヒゲダンと、島根のみんなとの絆の歌」と伝えていた。《たとえ僕ら遠く離れた場所へ行こうとも/変わらずにいたいよな? 変わるはずがないよな?》。そんなふうに歌うヒゲダンのアンセムソングは、地元に愛されるバンドだからこその約束の歌として響いていた。(秦理絵)
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