Perfumeはなぜ最先端のテクノロジーを駆使しながらもアナログなのか?

Perfumeはなぜ最先端のテクノロジーを駆使しながらもアナログなのか?
2019年10月、旧渋谷公会堂が「LINE CUBE SHIBUYA」として生まれ変わる。そのこけら落としをPerfumeが行うことになった。全8日間にわたる公演のタイトルは「Reframe 2019」。2018年3月にNHKホールで行われた「Reframe」の再演である。「Reframe」はPerfumeと、彼女たちのダンスの振付やライブの演出を手掛けるMIKIKOとクリエイター集団ライゾマティクスがコラボレーションして生み出されたショウで、デジタルテクノロジーと3人のパフォーマンスが融合したハイパーなステージングが圧巻だった。今回の会場となるLINE CUBE SHIBUYAが「最先端のテクノロジーを採り入れた次世代型ホール」を標榜していることからも、前回を超えた体験が待っていることは間違いない。

この「Reframe」のみならず、近年のPerfumeは最先端のテクノロジーとリンクしながら彼女たち自身の表現をアップデートしてきた。NTTドコモと組んで5G技術を駆使したパフォーマンスを展開した「FUTURE EXPERIMENT」ではロンドン・ニューヨーク・東京に散った3人がリアルタイムで完璧にシンクロしたダンスを見せたり、横浜アリーナでのライブを渋谷スクランブル交差点と同期して平成最後のカウントダウンを成功させたり。2017年の『NHK紅白歌合戦』での、ダイナミックVRやシームレスMRを導入して渋谷の街全体を「ステージ」にしてみせた“TOKYO GIRL”のパフォーマンスを覚えている人もいるだろう。だが、そのように表現技法がハイテクになればなるほど、よりいっそう3人のリアルなキャラクターや思いが浮き彫りになるように思えるのは筆者だけではないはずだ。


「テクノロジーと接していけばいくほど、胸がじんわりあったかくなるんです。テクノロジーは、絆を感じる、素敵なものだと思います」。NHKホールでの「Reframe」のステージで、あ〜ちゃんが言った言葉だ。「テクノロジー」に「胸がじんわりとあったかくなる」。この感じ方こそが、Perfumeというグループを象徴している。デジタルだったりハイパーだったり、そんなイメージも強いPerfumeだが、彼女たちの真ん中にあるのはまさに「胸がじんわりあったかくなる」ようなアナログな感情だということだ。

当然だが、「FUTURE EXPERIMENT」にしても「Reframe」にしても、中心にあったのはあくまで3人の肉体によるパフォーマンスである。デジタルやテクノロジーのイメージを「借りる」のではなく、それらを自分たちの肉体の延長として駆使し表現を拡張していく、それが今のPerfumeだ。彼女たちはテクノロジーでより多くの人とつながり、感動や興奮をリアルタイムで共有してみせる。「デジタル」なパフォーマンスが進化すればするほど、そこにはあ〜ちゃん、のっち、かしゆかという3人の「アナログ」な人間性、努力の歴史、表現者としての欲望がにじみ出す。なぜならPerfumeは何よりもまず彼女たち3人自身の物語にほかならないからだ。

中田ヤスタカは作詞家として、その時々の3人が置かれた状況や彼女たちが日々考えていることから着想を得て、そこから描き出される未来像を歌詞に落とし込んできた。“ワンルーム・ディスコ”、“Dream Fighter”、“ナチュラルに恋して”、“STAR TRAIN”……楽曲を挙げ始めたらキリがないが、そこに描かれるのは、恋をしたり、新しい世界にわくわくしたり、ときに悩んだり傷ついたりしながら未来に向かって旅をし、少しずつ成長していく女の子の物語であり、それはすなわちPerfumeの物語でもあった。中田はハイコンセプトなテクノポップユニットとして彼女たちをプロデュースする一方で、彼女たちの人間として、あるいはアーティストとしての自覚と成長を導いてきたのだ。


そしてその物語に呼応するように、3人はPerfumeであることを引き受け、その表現を「自分たち自身」とより強く結びつけていった。ダンスパフォーマンスのクオリティは飛躍的に上がり、ライブでのMCにも強い思いや自覚がにじみ出るようになっていった。数年前のある時期、あ〜ちゃんは「曲を作ったり歌詞を書いたりしたいと思うようになってきた」ということを発言していたが、そうした「表現者としての自我」が芽生えたこと自体が、当初のコンセプトに収まりきらない彼女たちの行く末を先取りしていた。曲を作らずとも、歌詞を書かずとも、Perfumeは3人自身の表現にほかならない――近年のPerfumeを強く支えているのはそんな確信だ。『COSMIC EXPLORER』『Future Pop』という直近のアルバム2作がより自然体で等身大の彼女たちを浮かび上がらせるのも、3人の物語の帰結としての必然だろう。

そして、その確信があればこそ、Perfumeは最先端のテクノロジーにも貪欲に接近するし、それを取り込んでなお、すべてをPerfume色に染める圧倒的なパフォーマンスを実現できる。そう、《30センチの距離感を キミの方からつめてきた/染める この旅色にさ》――最新の配信シングル“ナナナナナイロ”で歌われているように。今の彼女たちは、前掲のあ〜ちゃんの発言にならうなら、テクノロジーに負けることのない「胸がじんわりとあったかくなる」思いを、その歌とダンスで100%表現することができる。それがとことんハイパーで同時にものすごく人間的な、今のPerfumeの強さと大きさだ。(小川智宏)

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