今年は、3月のアリスター20周年ツアー追加公演におけるゲスト出演、そして7月の「FUJI ROCK FESTIVAL '19」と、ELLEGARDENのライブを2回観ることができている。5月の「MIYAKO ISLAND ROCK FESTIVAL 2019」や8月の「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZO」への出演もあったので、エルレのフェス出演は昨年の「THE BOYS ARE BACK IN TOWN TOUR 2018」を観ることができなかった多くのファンにとっても、嬉しい機会となったはずだ。
2008年の雷雨の「フジロック」出演から11年を経た今年、GREEN STAGEに帰ってきたELLEGARDENの4人は、本当に楽しそうに、凄まじいサウンドを振りまきながらシンガロングを誘発していた。ライブの終盤に細美武士(Vo・G)は「俺たちのバンド、シンガロングが日本一デカかった記憶があるんだよね」と、半ば挑発するように、半ば誇るように告げて“Make A Wish”に向かったのだが、それは大風呂敷でも何でもなく、今年の「フジロック」の3日間でも随一と言える巨大なシンガロングであった。
活動を再開させたバンドに触れたとき、「止まっていた時計が再び動き出すような」といった表現がよく用いられるし、僕も使う。実際にそういう感覚にとらわれるから書くだけなのだが、特に「フジロック」でのエルレには、観ているうちに「いや、時計は止まっていなかったのだな」と考えを改める瞬間が何度か訪れた。鍔迫り合いするような4人の音の緊迫感の中でこそ生まれる楽しさも、“Salamander”の恐るべき音塊が「これからのELLEGARDEN」を指し示すさまも、4人がそれぞれに歩んできた10年の経験の蓄積があればこそ、という手応えがあったのだ。
活動を停滞させることなく、走り続けるロックバンドはもちろん素晴らしい。一方でリスナーからすれば、決して予定調和ではない、本気の人間同士がぶつかりあうからこそ起こる摩擦や軋みや疲弊も、バンドへの信頼感を高めてくれるものだ。エルレは11年前、まさにそんな極限状態の中で一旦歩みを止めたわけだが、リスナーは4人がそれぞれにタフに、強烈な熱意をもって音楽活動を続けるのを目の当たりにしながら、本気の人間同士が生み落としたELLEGARDENの音楽を大切に反芻してきたはずだ。それが今年、山間の広大なGREEN STAGEにこだまするシンガロングとして、爆発したのである。
「10年経ったら、いろんなことが変わるし、俺も自分で分かるくらい変わった。起こり得ないと思っていたことが起こるから、俺たちの人生」。細美はそう語っていた。4人のメンバーにも、リスナー一人ひとりにも、空白の10年間などありはしない。誰にでも過酷な日々を生き抜いてきた、奇跡的と呼ぶべき10年があった。そのことを証明するために、今のELLEGARDENは活動しているのだと思う。ASIAN KUNG-FU GENERATION、ストレイテナー、ELLEGARDENが約15年ぶりに揃い踏みとなる「NANA-IRO ELECTRIC TOUR 2019」も、ただ昔を懐かしむだけではない、それぞれの15年を映し出すものになるだろう。(小池宏和)
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2019.08.27 13:00