ONE OK ROCKのNHKで放送されたワールドツアードキュメンタリー『World Tour Document』をあなたは観たか?

「未知の国でサクセスしたり、何かを成功に導くっていうことは、そんなに簡単じゃないことぐらいわかってるんだけど。でもやっぱり、僕らはバンド組んだ時からこれを目指してたし。俺らには必要なんだよね。だからやってる、っていうだけで」(Taka)

10月19日にNHKで放送されたドキュメンタリー番組『ONE OK ROCK World Tour Document』。今年2月にリリースされた最新アルバム『Eye of the Storm』を携えてワールドツアーを行ってきたONE OK ROCKに、2〜3月の北米ツアーおよび5月のヨーロッパツアーの計39公演にわたって密着した同番組からは、さらなる闘いに臨むメンバー4人の葛藤と覚醒がくっきりと浮かび上がってきた。

現在開催中の全国アリーナツアー「ONE OK ROCK 2019-2020 “Eye of the Storm” JAPAN TOUR」をはじめ、国内では今やアリーナ〜スタジアムをライブの主戦場とする彼らが、北米〜ヨーロッパでライブハウス規模の会場で連戦を繰り広げる。しかも、北米ツアーは『Eye of the Storm』発売後初のツアーの場でもあった。
真に「世界に響くロック」を追求して最新作『Eye of the Storm』を作り上げたONE OK ROCK。その楽曲のユニバーサルな訴求力に懸ける真摯な想いの結晶でもあるこの北米ツアーはしかし、彼らに多くの試練を与える苦闘の日々でもあった。

アルバム海外盤リリースのわずか4日後となる北米ツアー初日=ソルトレイクシティ公演。“Push Back”や“Grow Old Die Young”などライブ初披露となった楽曲をはじめ、ニューアルバム収録曲を積極的に盛り込んだステージだったが、楽屋に戻るTaka(Vo)、Toru(G)、Ryota(B)、Tomoya(Dr)は終始無言。「新たなONE OK ROCK」の音のイメージを異国で完成させる、ということの困難さが、4人の表情にはリアルに滲んでいた。
さらに、そんな状況に追い打ちをかけたのが、ほぼ毎日ツアーバス移動というハードなスケジュール。そんな中でコンディションをキープすることの困難さを、北米ツアー中盤=ボルティモア公演で喉の不調を抱えたTakaの苦闘ぶりや「今日は僕もちょっと支えきれない部分がすごいあった」というTomoyaの自戒が如実に物語っていた。

それでも、サウンドもアレンジも新しい『Eye of the Storm』をライブで表現していくために、イヤーモニターのバランスなどディテールの一つひとつに至るまでトライ&エラーを繰り返しながら、確実に「理想形」に一歩また一歩と近づいていく――。そんな4人の姿はまさに、自分たちの手で現実を切り開いてきたONE OK ROCKの在り方そのものだった。
実際、番組後半で映し出されたヨーロッパツアーでのオーディエンスは、北米ツアーのフロアよりも晴れやかな高揚感に包まれていたし、新曲群も格段に熱いシンガロングを呼び起こしていた。ヨーロッパツアーのファイナル=パリ公演の最後、“Wasted Nights”で歌メロを観客に委ねるTakaに応えて巻き起こった一面の大合唱は、新たな次元の音楽に挑んだONE OK ROCKだからこそ描き出せた最高の名場面だった。

北米ツアーの移動の車中、日本でのアリーナ〜ドームと海外ツアーとの規模感のギャップについて番組スタッフに質問されたTakaは、「でも、こういうことの一個一個の積み重ねで、ONE OK ROCKって日本でも大きくなってきたから」と至って自然な口調で答えていたのが印象的だった。冒頭に掲げた発言は、それに続けてTakaが語ったものだ。「僕らはバンド組んだ時からこれを目指してたし。俺らには必要なんだよね」と。
ロックとバンドの理想を追い求める姿がそのまま、僕らの希望になっていく――。そんなミラクルを体現し続けるONE OK ROCKの核心に、ダイレクトに触れることのできる1時間だった。(高橋智樹)
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