僕らのバンドはいつ解散してもいいという特権を持ってるんだよ。ほぼ何でも自分たちの思い通りにやっていいのさ。僕らを縛り付ける人間はいないんだ。だから自由な気分でいられる。そういう解放感が僕には必要なんだ(スティング)
ポリスの出現は、70年代以降のトリオ・バンドとしては最高の衝撃だった。
まだまだロンドン、UK各地にパンクの狼煙が立ちのぼるなか、風通しのよくなったシーンを背景に、彼らは<レゲエ+ロック>という当時としては最先端の武器を持って登場してきた。気の利いた連中だったら誰もがその武器を手にしたいと思ったものの、身につけるために充分な高いスキルを得ることは簡単ではない。
そんな近寄りがたい地点をいともたやすくクリアして出てきたのがポリスというバンドで、そのデビュー作『アウトランドス・ダムール』には、グループの勢いと初期のエナジーが詰まっていた。
デビュー後、注目を集めるなかでわかったのが、バンド結成の軸になったドラマーは人気プログレ・バンドの元メンバー、中心となっているボーカル&ベース、ソングライターは長年ジャズ・ロック・バンドの経験者、そしてギタリストは60年代から活躍する腕利きのテクニシャン揃いということ。
そんな彼らが素晴らしかったのは、キャリアや実績を振りかざすことなく、パンク・ムーブメントによって出現した新しい価値観の上に自分たちの世界を創り上げたことで、代表曲“孤独のメッセージ”とセカンド・アルバム『白いレガッタ』はシングル、アルバム共に全英No. 1を獲得、わずか1年でトップ・バンドの地位に達したのだった。
その後も、いっさいペースを落とすことなくツアーを続け、アルバムも『ゼニヤッタ・モンダッタ』、『ゴースト・イン・ザ・マシーン』と年1枚のペースで発表、どれも大ヒットさせ、最後に代表作であるラスト・アルバム『シンクロニシティー』へと結実していく。
それは3人が最高のアイデアとパフォーマンスを注ぎ込んできた進行形のダイナミズムが生んだ最高のゴールであったし、物語として完結したのだった。これを味合わないのは、あまりにもったいない。今回のスティング来日公演で見せてくれたように、“ロクサーヌ”を始め“孤独のメッセージ”、“ウォーキング・オン・ザ・ムーン”、“見つめていたい”といったポリスの名曲たちは、今も生き続け、新しい聴き手を求めている。ロック史上に残るトリオを再検証し、つかまえるのは今だ。(大鷹俊一)
また、ポリス総力特集には、以下のコンテンツが掲載されている。
★ポリス全盛期、全員への単独Q&Aを敢行した決定的ロング・インタビュー 【スティング編/スチュアート・コープランド編/アンディ・サマーズ編】
★徹底検証! ポリスの奇跡はなぜ可能だったのか?
★オリジナル・アルバム+ライブ・アルバム 完全ディスコグラフィー
★追跡! それぞれの「ビフォー&アフター」
ポリスの巻頭特集は現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。
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