お正月特別企画! ロッキング・オンが選ぶ2019年間ベスト・アルバムTOP10を発表!(第1位)

あけましておめでとうございます!

2020年を迎えたこのタイミングで、ロッキング・オンが選んだ2019年の「年間ベスト・アルバム」上位10枚を、10位〜1位まで、毎日2作品ずつ順に発表していきます。

年間1位に輝いた作品はこちら!


【No.1】
『ホエン・ウィ・オール・フォール・アスリープ、ホエア・ドゥ・ウィ・ゴー?』
ビリー・アイリッシュ



ビリーから世界の新章が始まる

世界中のティーンエイジャーが熱狂し、大人のロック・スター達もこぞって絶賛。今年音楽シーンの頂点に立った新世代のスーパースター、ビリー・アイリッシュが、わずか14歳で発表した“Ocean Eyes”から3年、満を持してデビュー作『ホエン・ウィ・オール・フォール・アスリープ、ホエア・ドゥ・ウィ・ゴー?』が発売された。今作は、21世紀生まれのアーティストとして初の全米チャート1位となったばかりか、グラミー賞では、17歳で主要4部門にノミネートされた史上最年少のアーティストとなった。時代を一瞬で変えた彼女をNYタイムズ紙はユニコーンと称していたが、確かに彼女くらいすべてが完璧な存在は、奇跡的ですらある。

タランチュラが口を這い、目から黒い涙を流すミュージック・ビデオで人気を獲得。ネオン・カラーの髪に、ゴスなネックレス、ヒップホップ風なバギー・パンツに、オーバーサイズのTシャツは、新たな思想を持ったスターが登場したことを遠慮なく告げていた。彼女はジェネレーションZのティーンエイジャーが抱える悪夢や真実を語ることをまるで恐れていない、新しいリアルなストーリーテラーにして、既存のメインストリームに逆らうポップの反逆児なのだ。

レーベルからはメインストリームのプロデューサーとデビュー作を作るように言われるが、「好きじゃない」と断る。それまで通り、兄でプロデューサーでもあるフィニアスと実家で2人で今作を完成させてしまったのだ。ポップ・シーンでは、1曲につき作曲家の名前が10人あってもおかしくない時代においてあまりに古典的アプローチである。さらに彼女自身は、タイラー・ザ・クリエイターからチャイルディッシュ・ガンビーノ、グリーン・デイに、アヴリル・ラヴィーンラナ・デル・レイなどを影響を受けたアーティストとしてあげているが、ラナ・デル・レイのウィスパー・ボイス以外には直接的なサウンドの影響は感じられない。むしろグライムスをメジャーにしたようなインダストリアル、エレクトロから、キャバレー的なサウンドなどが混在し、歯科医院で録音した金属音から割れたガラスがきしむ音など精神的な緊迫感や時代の闇などが、フィニアスの洗練されたアレンジで比較しようのない独自のサウンドに構築されている。歌詞では、《自分を終わらせたい》と、つまり死に取り憑かれ、自殺、恋愛の複雑さ、孤独、処方箋薬の過剰摂取、銃乱射の恐怖などを歌う。また、《カリフォルニアの丘が燃える》《人間ってあまりに愚か》だと地球温暖化を嘆く。21世紀のキッズが今直面している最大の恐怖から目をそらすことがない。「眠りについたらどこに行くの?」というタイトルも、悪夢から目覚めても、今の現実社会こそ悪夢なのだ言っているように思える。圧倒的にダークな今作だが、例えば、《i loveyou》と歌うバラードでは、そんな恐怖を抱くティーンエイジャーを抱きしめるように癒すように響く。インタビューした際に言っていたが、「もうすぐ死ぬ大人」は信じられないと。「今世界は狂っている。だから私の音楽は慰め、元気付けるためにある。あなたの気持ちは分かる。あなたは1人じゃない」と言いたいのだと。彼女は、真っ赤に燃え上がる地球の終わりを目撃しながら、自分の世代を救うために立ち上がらなくてはいけない、と思っている。しかも、自分がその使命を引き受けるのは当然だと淡々と語るのだ。これまでにそんなアーティストは見たことがない。その姿は世界の終焉に表れた救世主にしか見えなかった。(中村明美)

お正月特別企画! ロッキング・オンが選ぶ2019年間ベスト・アルバムTOP10を発表!(第1位)





「年間ベスト・アルバム50」特集の記事は現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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