コロナ禍の先にある洋楽来日公演の行方は? 一度きりのフェス「スーパーソニック」やこれからの洋楽シーンについて、クリエイティブマンプロダクション代表の清水直樹氏に訊いた!

日本の公演をキャンセルにしたいっていう人は交渉の中でほぼいなかった。どういう形にしても、延期を望んでいるアーティストやマネジメントがほとんどだった

――こんなにまとまって来日公演が中止や延期になったことって、初めてでしょ。これまでないですよね?

「ないない、30アーティストが、フェスティバルも含めて一気に飛ぶなんて。世界的に見ても、プロモーターにとって初めてだよね」

――ポップ・ミュージックがはじまってから一度もなかったよね。

「うん、3.11の時も、ニーヨはすぐに来てくれたり、カイリー・ミノーグも4月に来てくれたり。あの時は、(日本においてライブができない)エリアが断定されていたから、ここまですべてのアーティストが一度にキャンセルになることは経験していないし、初めてです」

――こういう時って、個々それぞれがいろんな事情があるし、いろんな考え方があるし、なかなか「こうしましょう」って一括したオペレーションで物事を進めることは、ほんっとに難しい中で、ああいう形で「5月31日までの来日公演はすべて延期もしくは中止となります」っていうアナウンスに持っていったのって、すごく大変だったと思うんです。しかも倣うべき前例がない中で。

「そうだね。実は、あのアナウンスをした時に、5月までの来日公演のアーティストすべてと、確実に交渉がまとまっていたわけではないんですよ。でも、どう考えても絶対に来れないから。いち早くその決断を言わなきゃいけないなって思ったのは、お客さんのことを考えたからなんです。ギリギリまで待っていたい人も、もちろんいるかもしれないけど、大半の人は早く情報を知りたいだろうし。その心配がだんだん焦りや怒りや、様々な感情に変わってきちゃうから、なるべく早く明確な答えを伝えなきゃいけないなって。それが一番突き動かされた動機です」

――それはすごく感じました。こっち側から来日を断るのって、プロモーターの仕事の中でも一番きついですよね。いつも、来日公演を実現させるための苦労はあるでしょうけど、今回のようにやらないことを進めるって、ほんっと辛いと思う。

「やってきたことがすべてパーになるからね。ただ、やはり一番感じたのは、やるのか/やらないのか、アーハの時みたいに、ギリギリでいろんなことを用意したり、気持ちも定まらないでやっていいのか?って考えることが一番フラストレーションだよね。自分もそうだし、きっとお客さんもアーティストも。だから、嫌なことでも決めた後のほうがさっぱりするよね。ほんっと、こんな思いを何十アーティストもするんだったら、バサッと『やらない』と決めたほうが次の目標に向かっていけるし。自分の経験値やいろんな状況でできないってわかったから、あの時点で、判断を早めにしたのは正しかったなって思います」

――海外のエージェント、マネジメントによって、いろんな反応があったと思いますが、交渉していく中で何かありました?

「そうだなあ、とにかくみんな、日本をキャンセルにしたいっていう人は交渉の中でほぼいなかった。みんな、どういう形にしても、延期を望んでいるアーティストやマネジメントがほとんどだったので、それはプロモーターとして嬉しかったよね。次に持ち越せるっていうことは。

あと、僕らがラッキーだったのは、1月末から2月頭にかけて、クイーンとペンタトニックスという大物の来日公演ができていたこと。クイーンなんか特に、サマソニ級の動員力を誇るものだったし、それがギリギリの時期に実現できたっていう。これが飛んでいたら、このインタビューもしていないと思うんだよね。きっとそれどころじゃなかった。タイミングも含めて。クイーン……それからは僕は神と呼んでいるんだけどさ(笑)、あれが実現できたことは、幸運だったと思う」


――できていなかったら、今回の決断もぶれていたかもしれないですね。

「そうだねえ」

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