「自分で作り出した世界のカオスから、構築した機能不全から、そして自分も加担しているすべての不公平と病気と不正から、自分自身を取り除く必要があった。自分を浄化するためにね」
昨秋スフィアン・スティーヴンスが発表した5年ぶりのソロ名義のアルバム『ジ・アセンション』は、驚きの作品だった。ずばりエレクトロ・ポップと表せるサウンドといい、ダイレクトにこちらに問いかけて要求を突きつける歌詞といい、これまでになかったコミュニケーション意欲が全編で貫かれていて。そんなアルバムの裏にある心境、そして環境の変化を存分に語らせているのが、こちらのインタビューである。
もっとも、音楽性については予兆があった。2010年の『ジ・エイジ・オブ・アッズ』でエレクトロニック・サウンドを本格導入したスフィアンは、昨年の『アポリア』ほか最近のコラボ作品でもシンセティックな音で実験。ここにきて脱フォークの過程を完了させると共に、病めるアメリカへの回答を提示した形だ。ご承知の通り、映画『君の名前で僕を呼んで』のサントラに参加し、広く認知された彼。本作は新しいファンのために間口を広げているようで、世間を支配する価値観を拒み、自分が進むべき道を確認する複雑な構造の作品であり、このインタビューをガイドに改めて聴くと、腑に落ちるところが多々ある。(新谷洋子)
スフィアン・スティーヴンスの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。