【43日間、連続公開!】ロッキング・オンが選ぶ究極のロック・ドラマー43選/ジョン・ボーナム

ロッキング・オン6月号では、「究極のギタリスト」を特集しています。そこでギタリスト特集とあわせて 、昨年の9月号に掲載したロッキング・オンが選ぶ「究極のロック・ドラマー」を43日にわたり、毎日1人ずつご紹介します。

「究極のロック・ドラマー」に選ばれたアーティストはこちら。

ジョン・ボーナム(レッド・ツェッペリン)

【43日間、連続公開!】ロッキング・オンが選ぶ究極のロック・ドラマー43選/ジョン・ボーナム

実質的に解散となったザ・ヤードバーズの残された北欧ツアーの契約を消化するため、ジミー・ペイジが68年に新バンド結成に動いた時、ジョン・ボーナムと出会った際の感動はいかほどのものだったのだろう。ジョン・ポール・ジョーンズの資質については同じセッション・ミュージシャンとしてよくわかっていたはずだし、ロバート・プラントの破格のボーカル・パフォーマンスについても自身で確認してよくわかっていたはずだ。

しかし、ドラマーはまだ未定で、ロバートからジョンを紹介され、そのジョンの力量を確信した時、きっとジミーはレッド・ツェッペリンというバンドの結成時点で、ドリーム・チームを獲得していたことを自覚したはずだ。ジミーのみならず、メンバーの誰もが語るのは、最初のリハーサルが爆発的なもので、とんでもないケミストリーが起きているのがよくわかったということだ。つまり、このバンドの4人のメンバーが揃わなければこのケミストリーは起きないということでもあるのだが、ツェッペリンの音源を聴き込めば聴き込むほどわかってくるのは、そのケミストリーの起爆剤になっているのが、ジョンのドラムだったということだ。そのリハーサルの様子については、ぼくたちにはわかりようがないものだが、『レッド・ツェッペリン』の“グッド・タイムズ・バッド・タイムズ”を聴けば、それはおのずから想像できるものだ。

ここで聴けるジョンのドラムは、おそろしくテクニカルでありつつ、すさまじく強靭なものでもあって、さらにところどころのドラムのアレンジが天才的な閃きによるものだ。それこそジミーが求めていたもので、なぜかというと、彼はブルース・ロック、もしくはブルースをまったく新しい次元で鳴らしたいという野心をこのバンドに込めていたからだ。一般のブルース・ロックがブルースをいかに60年代末当時のロックらしく鳴らすかということに腐心していた一方で、ジミーは自分がカントリー・ブルースやデルタ・ブルースのレコードを聴いて受けた、切実だがいびつな衝撃を、どうにかして比類ない強度を持つロックとして鳴らしたいと、つまりその衝撃そのものを現代に蘇らせることを目指していたからだ。ある意味でブルースという歴史の時空をねじ伏せて、なおかつねじ曲げていくような力業でもあったため、ジョン・ポール・ジョーンズとロバート・プラントの圧倒的な資質と才能はもとより、ジョン・ボーナムのドラムの圧倒的なビートの強靭さと閃きとテクニックはなによりも重要なものだったのだ。

そんなジョン・ボーナムの異常なポテンシャルが最も露わになったのが、『〜Ⅳ』に収録の“レヴィー・ブレイクス”だ。もともとカンザス・ジョー・マッコイとメンフィス・ミニーのデルタ・ブルース曲で、ロバートの提案で取り上げられたというが、ジミーはほとんどこの曲を作り変えたといってもいいほどの強烈なギター・リフとアレンジをほどこすことになった。しかし、この曲を、レッド・ツェッペリンの名レコーディングのひとつにしたのは、ロック史上最も重厚なグルーヴをジョン・ボーナムがドラムで生み出しているからだ。ジョンのドラムによって、ありとあらゆる文脈が吹っ飛んでしまい、ただ絶対的な説得力を持つ音の塊と化した音源へと成り果ててしまっているのだ。

あるいはライブ盤『永遠の詩〜』における“ロックン・ロール”もまた、神懸かったジョンの演奏が聴けるわけだが、この音源の詳細を追求すればするほど、ジョンのドラムの底知れなさもまたわかるのだ。というのも実は収録会場となったマディソン・スクエア・ガーデンの3日分の音源を部分部分で入れ替えながら編集したものだからで(07年のリマスタリング以降は、バンド演奏は基本的に73年7月27日の音源に修正)、これはすさまじくエネルギッシュに叩いているジョンのドラムが同時に正確無比でなければありえないことなのだ。また、07年以前の『永遠の詩~』の冒頭4曲の曲順についても、ジョンのドラムワークの懐の深さを、それも特に“レイン・ソング”の繊細さとダイナミックさをあえてリスナーに納得させたいという意思がジミーにあったとしか思えない。

その後も『フィジカル・グラフィティ』と『プレゼンス』という、ロック史上最高峰の名盤を形にしていくなかで、ジョンのドラムの存在はただ、その絶対的な意味合いを露わにしていった。ジョンの死とともにバンドに終止符が打たれたことについて、誰も疑問に思わなかったのは、誰しもが彼の存在の意味合いを理解していたからだろう。その後の息子ジェイソンの活躍で復活が一度だけ実現したのはまた別の話だ。(高見展)



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