【JAPAN最新号】ゲスの極み乙女。の10年――35分超えの「ワントラック」ベストアルバムはなぜこの4人でしか成立しないのか? 10年にわたる壮大なる実験、その真相を語る

インディーズの時、“ぶらっくパレード”って曲でピアノを弾いてもらって、ギターを置いた時に、この感じってないなって。
(このバンドは)あの時にもう完成してた(川谷)

現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』6月号にゲスの極み乙女。が登場!

ゲスの極み乙女。の10年
35分超えの「ワントラック」ベストアルバムはなぜこの4人でしか成立しないのか?
10年にわたる壮大なる実験、その真相を語る

インタビュー=小栁大輔 撮影=磯部昭子


バンド結成10周年記念ベストアルバムの収録曲が「1曲」というニュースを聞いて、「川谷絵音だなあ」と思ったが、実際そんな「1曲」を聴いて、というか、何度も何度も繰り返し聴いてあらためて思うのは、やはり「川谷絵音だなあ」ということだったりする。つまり、「1曲」という荒唐無稽なアイディアを出すのも川谷なら、それを完璧な形でまとめあげられるのも川谷の豪腕っぷりであり、結局のところ、これまでになかった発明的なエンターテインメントとして感動させてしまうという芸当もまた川谷しか許されないものだ。ワントラック、全35分強に及ぶ、めくるめくゲスの極み乙女。絵巻。切なく、かつひらめき溢れる名曲オンパレードの大展開。驚くほど完璧に構築された35分の再編集トラックである。実際にはちゃんMARIが苦労しながらつないだらしいが、だとするなら、ちゃんMARIもまた、圧倒的なものづくりに先立つマッドネスを持っているのだと思う。

ゲスはすごいバンドだ。ゲスの前にもあとにも、この極上の切なさとキャラが立ったビートとリズムを両立させながら、ライブとしてのエクスタシーを担保し続けているバンドはいない。その現象をもっと乱暴に言い換えてしまうならば、こんなに「うまい」4人がバンドを組む、ということはそうそう起こらない、ということなのだと思う。そもそもその奇跡を演出し、10年にわたって4つの才能が乱舞できる土壌としての名曲を書き続けてきた川谷はやはりすごい。(小栁大輔)

(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年6月号より抜粋)



『ROCKIN’ON JAPAN』2022年6月号