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    ストリーミングは「販売」か「ライセンス」か、欧米の音楽業界で紛糾

    ストリーミングは「販売」か「ライセンス」か、欧米の音楽業界で紛糾

    イギリスのアーティストやマネージャーらが音楽ストリーミングによる売上をレーベルとアーティストの間で折半するように訴えている。アーティストやマネージャーらは新しくAMPという団体を立ち上げていて、ここを通してEUの欧州委員会にも同様の要求を訴え出ているという。

    こうした動きが出ているのは、ダウンロードやストリーミングについての収益環境がまだ流動的で、ダウンロードやストリーミングについての法解釈も定まったものとはなっていないからだと『ザ・ガーディアン』紙では指摘している。たとえば、イギリスのベガーズ・グループではしばらくストリーミングからの売上をアーティストと折半していたが、ストリーミングの売上がその後膨らんできたため、最近になってアーティストの取り分を削り始めたことが明らかになっているという。

    こうした例からもわかるように、ルールなどはその場しのぎで決められていることが多く、また前例などがないため、レーベルや著作権管理団体らは当然ながら自分たちの取り分を多くする印税取り決めを設定しがちだと『ザ・ガーディアン』紙では解説している。そのため、レーベルではダウンロード配信やストリーミングを音源の販売と解釈し、その際、アーティストへの印税はおよそ5パーセントから20パーセントというものになりがちだという。また、レーベルによっては、ダウンロードやストリーミングについてもジャケットの装丁料をアーティストに請求して印税から差し引いていたケースもあったとか。

    その一方でダウンロード配信などが契約条項に盛り込まれる以前にレーベルと契約を交わしたアーティストらは、ダウンロード配信やストリーミングはライセンス販売にあたると主張していて、売上の50パーセントはアーティストに譲られるべきだと訴えるケースが多いという。たとえば、アメリカのオーディション番組『アメリカン・アイドル』出身のアーティストらのマネジメントを手がける19レコーディングスはソニー・ミュージックに対して訴えを起こしていて、ストリーミングの売上についてのアーティスト印税の見直しを要求している。その際、ストリーミングはどう考えても「放送」に準じる活動だと主張し、これを「販売」とみなしてより少ない印税を設定してアーティストに支払っている現状についてソニーを契約義務違反として糾弾している。

    ワーナー・ミュージックも先頃着メロやダウンロード配信にかかる印税をめぐって大掛かりな訴訟をアーティストらにより起こされていて和解に持ち込んでいるが、ソニーもおそらく19レコーディングに対して和解に持ち込むはずだと『ザ・ガーディアン』紙はみている。それは裁判を続けてストリーミングは販売ではないという判例が残ってしまうことだけは避けたいからだという。今回アーティスト側が欧州委員会にまで訴え出たのは、一向に判例が確立される目途もたたず、いつまでもストリーミングの法解釈が定まらず恣意的なものにとどまっている現状を改善するためものではないかとのことだ。

    なお、イギリスではたとえば、BBCによるダウンロード配信については「放送」として印税が設定されていて、著作権管理団体は一般的にストリーミングについてライセンス料と再生演奏料を組み合わせた印税として解釈していて、「販売」とは考えていないため、レコード会社との考え方のズレが見受けられるという。
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