夕方から雲行きが怪しくなり、遠くには稲光すら見えていて、この会場にも降雨が予想され、実際にちょっと降ったのだが、いつの間にか見事に雨雲は遠ざかったようだ。何だか、神がかっているような気がしてしまう。そうこの日の最後のアクトはドラゴンアッシュだ。ロック・イン・ジャパン始動以来の5年連続登場、そして全てヘッドライナーを務めてくれた、何度も使われている言葉だけれども、実に、本当に、このフェスの守護神なのだ、と思う。 “Harvest”のSEに乗ってメンバーが登場し、“Life goes on”からスタート。何度も観た、でも何度観ても感動できる風景だ。波のように左右に振られる手、手、手。そしてノイズ・ギターが炸裂する大サビでの、3万人超の大ジャンプ。熱狂が醒めぬまま、間をおかず新曲“Shade”へ。先ほどの圧倒的なハピネスとは趣を異にした内省的な詞、音響へのこだわりを今までになく増したサウンド――つまりは彼らが新しいモードに入ったことを感じさせることで話題の新曲なのだが、違和感もなくライヴにとけ込んでいた。彼らはこのフェスを挟む形で行なっているMOB SQUADツアーで、この曲をしっかりとやり込んできたのだ。この新しいモードもまた、かなり彼らの中でしっかりと消化されているのだ。 続いて“Posse in Noise”。「歓喜はNoiseの内側にある」を地で行く熱狂的光景。長いスランプをくぐりぬけて作られた曲“Revive”。「飛び跳ねろー!」のコールに、お客さんは一斉に、そして圧倒的に反応している。サッカーで言うなら、お互い信頼しあってるコールリーダーとサポーターの関係みたいなのだ。 打って変わって中盤は、DAの歴史を1997年→2004年→1998年→2003年と、ゆったりとタイムスリップしてゆく時間帯。“Maximum of Life”、まだ10代だったKjが作った曲だ。続いて披露された新曲は、耳慣れぬインプロ風のイントロ、Kjは前曲に引き続きギターを持ったままだ。賑やかなドラムとKjの優しい声の絡みが気持ちいい曲だ。ある意味“Maximum of Life”と地続きの曲だと言えるのかもしれない。そしてこれまた懐かしい曲、“Invitation”を経て“morrow”へ。お客さんもわりにじっくりと耳を傾けている。 終盤は歴史を辿るのではなく、今、この瞬間、この場所にいることをわかちあい、たたえあう祝祭空間。KjはMCで言った。「毎年楽しそうな顔を見せてくれる皆さんに感謝したい。そして、この場所のことを歌った歌を歌います」。そしてあの、発表されて以来ドラゴンアッシュのライヴを目撃した何十万というひとびとの絶叫を呼んだあのイントロが流れる。“百合の咲く場所で”。Kjとお客さんのコール&レスポンスの凄さは不変だ。祝祭の「祝」を強く感じさせる“Canvas”、そして徹頭徹尾「祭」な“Fantasista” 。もうじゅうぶんお客さんの声は出てるのに、「全然聞こえない!」とKjが煽る。まじハンパない、耳をつんざく大コールが炸裂し続け、お客さんのヴォルテージは完全に最高潮だ。高速アンセムの3連発、5年連続ヘッドライナーはやはり伊達じゃない。ライヴバンド、ドラゴンアッシュの底力が100パーセント発揮されていたと思う。 Kjはこの祝祭空間を作り終えたあと、こう言った。「皆さんの声が重たく感じる時期もあったんですけど、今はその声があるから音楽を続けていられるんだと思います。ありがとうございました」。ラストの曲は、ちょうど彼のMCみたいな、正直で、でも優しくて温かい、そんな曲だった。“静かな日々の階段を”。 アンコールは“Viva la revolution”だった。滅多にやらない曲、でもロック・イン・ジャパンでは何度も披露してくれている曲だ。本当に感動的だった。この曲が作られた年から5年が経ち、初めてのロック・イン・ジャパンから4年が経った。4人だったメンバーは7人になった。シーンも移り変わった。DAの羅針盤を司るKjの音楽的興味も変貌しつづけている。そんな中で、彼らはいくつもの勝利と歓喜、そしてそれと同じくらいの絶望やスランプを経験してきたのだ。今もKjはインタヴューで「ドラゴンアッシュがこれから進む方向が難しくなってきている」とはっきりと言うほどだ。でも、僕は信じている。「ロック・イン・ジャパンの、ドラゴンアッシュの、ビバ・ラ・レヴォルーション」を信じる。言いかえるなら、変わらぬ希望というやつだ。ドラゴンアッシュだけじゃなく、我々も得たものも大きければ、失ったものもまた大きい、そんな日々を生きている。何故そんな日々を生きていけるのかといえば、変わらぬ希望というものがあるからだと僕は思う。そして僕は明るいものであると信じる。ドラゴンアッシュの未来と、我々の未来を。 来年も、同じように、彼らとここで逢いたい。(柳憲一郎) 1. Intro(Harvest) |
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Dragon Ash のROCK IN JAPAN FES.クイックレポートアーカイブ