『TENET テネット』を見た勢いで『メメント』『インセプション』『インターステラー』をイッキ見して

『TENET テネット』を見た勢いで『メメント』『インセプション』『インターステラー』をイッキ見して
クリストファー・ノーランは映画によって時間に抗い続けている。
『メメント』では新しい記憶を保てない事件の後遺症、『インセプション』では多重階層の夢、『インターステラー』では相対性理論、そして最新作『TENET テネット』では時を逆行する回転ドアという、一定のスピードで一方向に進み続ける「時間」というものの秩序を解体する何かを、誰も見たことのない、そしてノーランでなければ生み出せない映像表現によって形にしてきた。
当然ながらそれは圧倒的に非日常な物語になるのだが、なぜかそこには「これこそが現実だ」という生々しい感触がある。
それは私たちの人生において「時間」こそがフィクションの源だからだ。
記憶を保てない男の視点、夢の深層、ブラックホール内の五次元世界、時間の逆走をノーランの映画で体験することで、私たちは「時間」というフィクションから解放されることができる。
そこで得られる強烈で生々しい感覚こそがノーランの映画が持つ力である。

ノーランの映画は、難解で彼の頭の中についていくのが難しいと語られがちである。
そういう意味では『TENET テネット』もなかなかの難敵である。
しかし彼が映画によって試しているのは私たちの頭の良さではない。
「時間」というフィクションから解放された世界を直感的に味わい、その奥にある熱いメッセージを受け止める感性。
それを持っていれば『TENET テネット』もまた極上のエンターテインメント傑作として味わえる。(古河晋)
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