『由宇子の天秤』を観た

『由宇子の天秤』を観た
既に海外の映画祭で次々と結果を残しているけれど、まだまだこれから間違いなく世界的に評価されていくであろう、本当に凄い映画。
極力ネタバレなく書きますが、そう言われて先入観なく観たいと思った人は、まだ以下読まないでください。





殺伐とした現実が描かれる中で、魅力ある主要登場人物たちが何人も出てくるけれど、ほぼ全員が現実にありうる形でその魅力を裏切る部分を持っている。
今の社会派ドラマや映画のテーマによくなる、正義の裏表の話は冒頭の15分ぐらいで、ある意味、ただの伏線として終わる。
そして2時間半の映画の真ん中ぐらいの意外な場面で心が決壊して涙が流れて、でもその涙がすっかり乾くぐらい激しい感動のリバースが最後には訪れる。
この映画の洋題はシンプルに〝A Balance〟なのだが、「正義」と私たちが呼びたがるものと、その対極にある簡単に「悪」と呼ぶこともできないものの間で、揺れ続けながら何かを選んだり、何も選べなかったりして生きていくのが人なのだということが、この映画では描かれるのだ。
正義に突き進む時、人はもう間違いに足を踏み入れている。
信頼が築かれていく時、人はもう裏切り始めている。
今まさに私やあなたが打とうとしている次の一手は、全ての人が自分の中に隠し持つ殺伐とした「弱さ」から目を背けるための一手かもしれない。
そう思い止まらせる力を持つ映画だ。(古河晋)
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