ついにこの映画を観れた。
それだけで今日はちょっと嬉しい気分で眠れる気がする。
というのも大げさじゃないくらい良かった。
店を火事で失った夫婦が次なる店の開店資金を稼ぐべく、ふたりで結託し結婚詐欺を始める……というモチーフが象徴的に語られているこの映画。
そのモチーフ的なおもしろさ、という意味で言っても非常におもしろい。
宮部みゆきの『火車』のようでもあるし、本当によく転がっていく物語の行方に身を任せることがイコールそのままこれほど楽しめる映画というのも、実はそれほどないと思う。
ただ、その一方で、転がるストーリーが徐々に浮き彫りにするものこそが、当然、この映画の肝であって、そんな物事の「分水嶺」を描く精度は、西川美和映画史上もっとも鋭利なのではないかとも思った。
さらに、やはり西川美和映画史上もっともユーモラスな映画でもあるというのがまた恐ろしい。
テーマがモチーフをどんどん超えていくという、理想的な映画だと思いました。
試写室を出ると、たまたま西川監督がいらした。
「ものすごかったです」と伝えると、「ほんとですかぁ?」と笑っておられたけれど、『夢売るふたり』は本当にすごい映画だと素直に思います。
また観たいです。(小柳)