アルバムの1曲目“となりのトトロ”を歌うのは、くるりの岸田繁。童謡のようなファンシーで元気な原曲のイメージとはかけ離れていたので、本人自ら“となりのトトロ”か“崖の上のポニョ”を歌いたいと希望していたというエピソードにも驚いたが、実際に聴いてみるとまったく違和感がない。どんな歌詞でも自分の言葉にしていく歌声のキャパシティの大きさに脱帽した。
3曲目の“いのちの名前”を歌うのは、幾田りら。幼少期からずっと聴いていた大好きな曲だと語り、思い入れの強さがうかがえる。ピアノを中心としたシンプルなアレンジで、ここまでドラマチックな感動を覚えるのは、そのずば抜けた歌唱力があってこそ。複雑なメロディと言葉数の多い歌詞を颯爽と歌いこなしていくYOASOBIでのボーカリゼ―ションについては今更言うまでもないが、壮大なバラードを丁寧に歌い紡ぐ声もまた美しい。
そして、アルバムのクライマックスを飾るのは、SUPER BEAVER・渋谷龍太が歌う“時には昔の話を”。普段のバンドサウンドとは異なるクラシカルなアレンジも様になっていて、ビーバーのときにはあまり感じない、なんとも言えない切なさが押し寄せてくる。そして、時代背景は違うのだが、《お金はなくても なんとか生きてた/貧しさが明日を運んだ》《嵐のように毎日が燃えていた/息がきれるまで走った》と渋谷が歌うと、まるでメジャー落ちしてから自分たちの力だけで巻き返しを図ろうとしていたあの頃を振り返っているようで、胸が熱くなる。
ジブリの数々の名曲と、それぞれのボーカリストの底力を、ぜひ堪能してほしい。(有本早季)
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