客電が落ちてビートルズの"Hey Bulldog"が流れる。何度繰り返し観てきたか判らないいつものマカロニえんぴつのオープニングだが、今までと違うのは、その瞬間ステージ中から大量なムービングライトのシャープなビームがアリーナ席最後方まで覆い尽くしたこと。とにかくいきなり派手。そのメジャー感が凄かった。
マカロニえんぴつの「マカロックツアーvol.16 」国立代々木競技場第一体育館公演を観た。
結成11年、長らくライブハウスを主戦場にして一歩一歩階段を登ってきた彼らだが、アリーナでのライブはもうかなりの本数を数える。関東圏だけでも武道館、さいたまスーパーアリーナ、横浜アリーナ、など各所でワンマンライブを行なっている。
ただ今までのそれは、遂にここに辿り着いた、という特別な感慨が客席からもアーティストからも感じられる非日常感のあるライブだった。対してこの日の代々木体育館は、会場のスケールとアーティストのパフォーマンスが対等に合致している普通で自然な「ツアーの東京公演」という印象だった。気負いも背伸びもなくアリーナ会場が自分達にとっての新たな主戦場になった、ということにマカロニえんぴつの進化と成長を実感した。
声出しの解禁という要素も大きかったのだろう。ライブハウスとアリーナの境界線が無くなったようにも感じた。
8月にリリースされたメジャー2ndアルバム『大人の涙』は、音楽的な深化とバリエーションの豊かさが際立ったアルバムだったが、だからこそそれに対応したライブも比例してスケールアップ出来たのだと思う。
音楽はより繊細になり、ライブはより派手になる。その両極に進めている彼らが頼もしい。(海津亮)
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マカロニえんぴつの現在を実感した代々木第一体育館
2023.11.19 15:32