歌いたいもの、
伝えたいもの、
届けたいもの。
羊文学にはバンド初期から一貫してブレない大きな軸が1本あり、そのどれもが変わっていて変わっていない。
しかし近年、我々リスナーの受け取り方、聴こえ方、感じ方は確かに変わったと思う。
それが顕著に表れたのがTVアニメ『呪術廻戦』「渋谷事変」のEDテーマ“more than words”で、サウンド、メロディ、歌詞から、我々は確かにその変化を感じ取ることができる。
それはまさしく呪術のように本来は目に見えない、触れることのできないものであるはずだが、今の羊文学を見つけることができる者にだけは確かに感じ取ることができるのだ。
『バタフライハグ』をテーマとした最新アルバム『12 hugs (like butterflies)』は、「美しさに対して執念深い気がする」とインタビューで語ってくれた塩塚モエカ(Vo・G)の、そして羊文学としての美的感覚が研ぎ澄まされた一作。
自らを抱きしめるように優しく深く、肌の表面からじっくりと浸透していくような12曲が収められている。
前作アルバム『our hope』ではほとんどの楽曲において《僕》《君》という言葉が使われていたのに対し、今作は《私(わたし)》《あなた》という表現が多いことも特徴的で、内省的でありながら解放的、孤独でありながらも共に没入できるような一体感がある。
こと“more than words”に関しては《私》すら不在で、《彼が言った言葉》《巡ってく夜がきみにもあるなら》《どんな暗闇だって照らすライト/あなたがいること》と二人称が変化していくのも印象的だ。
《give you more than words》と歌詞及びタイトルにもある通り、羊文学は今、言葉以上のものを届けようとしている。
インタビューではそれが一体なんなのか、バンドのヒストリーを辿りながら核心に迫りました。アルバムを聴きながら、その想いに触れてください。(橋本創)
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羊文学が今、言葉以上に届けようとしているもの――最新アルバムについてロングインタビューで迫りました
2023.12.06 18:30