JAPAN JAMで初披露してくれた“修羅の巷”が、夏のROCK IN JAPANでは歌もサウンドもよりソリッドに研ぎ澄まされていて改めて神サイは「努力のバンド」だと感じたが、今夜の本編最後で鳴らされた“修羅の巷”はそれを遥かに上回るとんでもないスケールに成長していた。桐木岳貢のベースと黒川亮介のドラムのたくましいリズムを土台として、吉田喜一のエレキと柳田周作のボーカルが大きな壁となってすべてをなぎ倒しながらこちらに向かってくるような圧巻のパフォーマンス。神サイの努力の証は“修羅の巷”だけでなく全曲に刻み込まれていて、1曲1曲から全国8都市を巡る中での血と汗と涙の日々が音となって立ち現れてくる、ファイナルにふさわしい2時間だった。
ライブはインスト曲“Into the deep”を高らかに鳴らす桐木岳貢のベースで開幕。“イリーガルゲーム”では吉田喜一がギターを弓で弾くボウイング奏法で演奏に深みを出し、キーボードとヴァイオリンを加えより艶っぽく仕上がった“スピリタスレイク”では黒川亮介のドラムが観客を美しく酩酊させ、全編ハイライトと言っても過言ではない仕上がりっぷりだった。アンコールで披露された“告白”はアルバム『心海』では柳田の弾き語りで収録された独白のような曲だったが、ライブでは《父さんも母さんも/友達も恋人も/みんな全部/消えちゃうんだろう》の《友達も》の部分でメンバーが登場。神サイ4人の確かな絆とファンの熱量をエネルギーにして柳田のボーカルは冴え渡り、魂の震えのようなアカペラから火を吹くようなロングトーンまで巧みにコントロールし、“夜間飛行”に綴られた《I wanna be a Rockstar》のメッセージをまさに「ロックスター」として全力で体現し続けた。
ホールツアーを経てバキバキに仕上がった神サイは、年末のCOUNTDOWN JAPAN 23/24、12月30日のCOSMO STAGEに出演。ライブの最後で、来年全国28都市でのライブハウスツアー「近接する陽炎」と全国5都市でのZeppツアー「開眼するケシの花」の開催も発表された。柳田も「バンドは生物」と言っていたが、バンドとして脂に乗っているこの瞬間の神サイを今絶対に観てほしい。(畑雄介)
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