《想えば思うほど沼る》("愛してみてよ減るもんじゃないし”)という表現がまさに当てはまるライブだった。
この日の対バン相手はオレンジスパイニクラブ。最新曲“ルージュ”で幕を開けたオレスパのライブは、途中で挟まれる小粋なMC、対バン相手として選んでくれたねぐせ。に向けて繰り返し告げられた感謝の気持ち、そして会場を大きく揺らした"キンモクセイ”に至るまで、優しさに包まれながらもギラギラと照りつく青春むき出しのソウルをぶつけるその姿に、会場のボルテージは立ちどころに上がっていった。
程なくしてステージに姿を現したねぐせ。――「宇宙でいちばんあったかいバンド」を自称する彼らのライブは、これまでとはなにか様子が違っていた。
開始早々、りょたち(G・Vo)が会場を見回してスモークの演出を「湯気」と見間違えるという愛嬌たっぷりの天然ぶりを披露して、「暑いから水分補給してください」といった旨の言葉をオーディエンスに投げかけていたが、この日、ねぐせ。から放たれるエネルギーは並々ならぬものだった。
確かに途中、湯気が立ち上っていくほどの熱気が会場を覆っていて、楽曲ごとにこの日の最高点を更新していくようなライブパフォーマンスに圧倒されてしまったのだ。
それに拍車をかけるように放たれた新曲"あの娘の胸に飛びこんで!”や会場をまるごとのみ込んだ“グッドな音楽を”でもねぐせ。というバンドのポテンシャルを再認識させられた。
全国9都市を巡ってきたこのツアーが彼らにもたらしたものは、「私たちも(ねぐせ。の音楽を)愛すからあなたたちも自分の音楽を愛してね」というオーディンスからの一方通行ではない切実な想いと熱意。
それを各地で受け取ってきた彼らの心はあったかいどころか沸騰寸前で、爆発的なエモーションが放出されたO-EASTはこの日、魔法がかけられらみたいに「日常」から切り離されていて、《音楽にはそんな力がある》と改めて確信できる、そんな濃密でホットなライブだった。(橋本創)
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