Eveの美しい歌声が響きわたる新曲“pray”に込められた「祈り」の正体

Eveの美しい歌声が響きわたる新曲“pray”に込められた「祈り」の正体
Eveが作詞と歌唱を担当し、澤野弘之が作編曲を手掛けたフジテレビ系ドラマ『院内警察』の主題歌“pray”。

澤野弘之特有の壮大なサウンドスケープは今回、pray=祈りというひとつのテーマの中でより自由に、そして荘厳な奥行きを持って密やかな世界を構築し、楽曲を象徴する3拍子の波の隙間を伝うようにEveの歌声が優しく響きわたる。

自身の心のうちを深く覗き込んだときにこみ上げる不安や迷いや葛藤を吐き出すように、そして断ち切るように声を振り絞るEve特有の歌唱とは趣が異なり、1番Aメロの《会えない時間が 心を震わし/蓋した想いは 飽きれるほど》の自信なく頼りなさげに震える歌声にEveの新たな一面を垣間見つつ、同時にその切実な響きに一気に心を掴まれた。


amazarashiのアートワークやMVを多数手がけているクリエイター・YKBXが制作したMVを見ても、ここで歌われる祈りが決して「希望」のためだけのものではないことがわかる。
それは、サビで繰り返される《私たちの声も 貴方たちの声も/何 1 つ交わりはしない/正義も悪も 真実も嘘も/意味を成さない気がしてしまう》という一文にも表れている。

これは解釈の一つにすぎないが、この曲で歌われる祈りとはつまり、力強く願うことでも、両手を組んで静かに佇むことでもなく、自らの信念を曲げないことでも信じ抜くことでもない。
確かに祈りが心を救ってくれる瞬間もあるが、それはやがて身を滅ぼし、望んでもいない誰かの呪いに変わるかもしれない諸刃の剣なのだ。

だから、震えた声だとしても、《伝えたい言葉》を届けよう。それこそが言葉を何よりも大事にしてきたEveにとってのひとつの答えであり、祈りの先にある唯一の希望なのではないだろうか。(橋本創)


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