その耳心地のよいサウンドと歌声がサブスクやSNSを中心に広がっていくのにはとても頷けるが、BGMにとどめておいてほしくないなと私は強く思っている。
現在発売中のJAPANの初インタビューで、自らもコンプレックスを抱えているとボーカル・ギターのAsakuraが語ってくれていたが、そんな彼女が自分に発破をかけるかのように綴られた歌詞によく耳を傾ければ、背中を押される人がきっと多いはず。
《イケてるあの子はもう自由/そろそろ起きなよ》と、失敗を恐れるあまり動き出せなくなってしまった人を奮い立たせるようなフレーズが繰り返されるサビに、ラストでは《気にしないで/自分を愛して》と締めくくられる“Bite you”の歌詞は、自分を「イケてない側」だと思ってしまう人の気持ちがわかるAsakuraが歌うからこそ、突き放されずに優しく心に響く。一聴して「クール」で「おしゃれ」なイメージが先行するのは曲がかっこいいので当然なのだが、muqueの人間味にあふれたエモーショナルな一面も知ると、ますますその魅力にとりつかれるに違いない。
インタビューでmuqueの本当の姿にふれて、ぜひ歌詞を見ながらこれまでの楽曲も聴いてみてほしい。(有本早季)
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