ギター・リコーダー・ピアニカによるゆる〜いサウンドで人生の真理を歌うバンド「ゴリラ祭ーズ」が素晴らしい

あーもう音楽聴けない、ってときがたまにある。コンプがかかって音数が多くてきらびやかで隙のない音楽を耳が受けつけない。そんなときにでもなんかは聴いていたい、というわがままな耳に、そっと染み渡るお粥のような音楽を奏でてくれるのが「ゴリラ祭ーズ」というバンドだ。

コミックバンド?と思った人もいるかもしれないが、決してそうではない。滋賀発の3人組「エクストリームアンニュイスーパーウルトラポップバンド」(自称)、それがゴリラ祭ーズである。

つまり、どういうこと?とさらに思った人に具体的にどんな音楽性なのかを説明すると、栗コーダーカルテットSAKEROCKを足して2で割ったようなインストバンドで、たまに歌ものもやる、という感じ。


ゴリラ祭ーズの口当たりのいい部分ばかりを紹介してしまったが、どの曲にも一筋縄ではいかないアヴァンギャルド精神がしみしみに染み出ているのがこのバンドの面白いところ。牧歌的なミドルチューン“マフィン”は1番サビ終わりで転調したあと最後まで戻ってこないし、キャッチーなポップソング“そうはいっても”は間奏でゲリラ豪雨のように突如フュージョン的サウンドになだれ込み、ゴリラ祭ーズ随一の美メロを響かせる名バラード“寝ても覚めても”はなぜか後ろでずっと変な音がピョロピョロ鳴っている。体にやさしいお粥なのに、カルダモンとかクミンとか謎のスパイスがたくさん入ってて時々変な風味がするような。


そんな音に乗せて、歌詞でハッとするようなことを言ってるのがまた最高なのだ。

大好きな人に 大嫌いと言われたり
大嫌いなことで 生計を立てたり
なんかさ 生きているんだ
嬉しくて 仕方ない 誰かに言いたい
大好きな人に 大好きと言われたり
大嫌いな歌で 涙流れたり
ほんとさ めちゃくちゃ凄いんだ
こわくて仕方ない
あなたに会いたい

(“寝ても覚めても”より)

どこまでもシンプルな言葉、シンプルな感情ながら、切実なボーカルに乗せて歌われると人生の真理のように鋭く心に突き刺さる。インスト曲も素晴らしいんだけど、言葉にも強さがあるバンドだから、もっともっと歌モノも出してほしいなあと思っている。(畑雄介)


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