一人だけど、独りじゃない──アイナ・ジ・エンドの表現者としてのすべて、そして「愛」に溢れた人生のすべてが注ぎ込まれた日本武道館公演を観て

一人だけど、独りじゃない──アイナ・ジ・エンドの表現者としてのすべて、そして「愛」に溢れた人生のすべてが注ぎ込まれた日本武道館公演を観て
アイナ・ジ・エンド、初の日本武道館。BiSHでは叶わなかった夢の舞台に、アイナはたったひとりで立った。

舞台には巨大な壁面LEDと傾斜のついた床面LEDのみ。あとは真っ黒でバンドメンバーさえ序盤は後ろに隠されている、という「見せるもの」を絞ったステージで、アイナ・ジ・エンドという稀有な表現者のすべてが出し尽くされた2時間だった。

時にはサイケデリックな映像と大所帯のダンサーを引き連れながら自身の内側にある「乾き」や「憂い」を爆発させ、時には自室でくつろぐようなラフな佇まいで胸の奥にしまった大切な思い出をひっそりと取り出し──アイナの激情的なアーティスト性と素朴で優しい人柄が1曲1曲編まれていきながら、美しい織物として私たちを力強く包みこんでくれるような感覚だった。

武道館で初披露された新曲“ハートにハート”は、こんな一節で始まる。《ハートにハート/目には目をみたいに/愛を配るの》──先ほど「たったひとりで」と書いたが、武道館のアイナは一人でありながら、決して独りではなかった。BiSHとして活動してきた8年間、アイナが人生で出会ってきたすべての人に配ってきた「愛」が、総勢30人にも及ぶダンサーとバックバンドとともにあの舞台には立っていた。

11月には3枚目のフルアルバム『RUBY POP』が3年ぶりにリリースされる。アイナが活動を通して届ける「愛」にこれからももっともっとふれていたい。(畑雄介)


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